この映画の1年くらい前に、たまたま出会った黒人ダンサーとクラブで話しをしてて、「今ロスの方ですごいかっこいいダンスが流行ってるらしい。」って話を聞いたのね。「どんなダンスなの?」って聞いたら、「いや俺らも知らない。見たこともない。でも、周りは凄くかっこいいって言ってる。」って、言うから、俺はCウォークとかのギャング系の、相当悪い奴がやってんだろうなって思ったんだけど、黒人同士ですら怖くていけないって言ってるし。「何だよ、お前達が分からないんじゃ、俺ら行きようがないじゃない。」って思って、1年経ってこの映画見たときに、「ぁ、これのことを言ってたんだな。」って思った。だから同じ黒人から見ても、かっこよく見えてたみたいだね。ヒップホップが出てきた時に現地に行ったら、黒人じゃなくてハーレムの隣のサウスブロンクスに住むプエルトリコ人が創ったものだった。(※注)実際、初期のブレイクダンスがニューヨークで流行った時に、クレイジーレッグスとかプエルトリコ人が始めたものを、俺たちは勝手に「黒人」って思いこんでたんだ。ブラックミュージック、ソウルミュージック=黒人ってね。行って感じたのは、まず人種が違って、ラテン系だから当時俺たちが8ビートをやっていた時に16ビートで「スタ・スタ・スタ」ってメキシカンのリズムも入ってて、ノリも全然違った。あの時はショックだったね。このクランプも同じで、結局、同じ国同士でも情報を得づらいし、しかも、そこだけで流行らせようと思ったわけではない物が出来てるよね。俺たちは余計知りたいって思うし、スキーター(ラビット)に連れて行って欲しいと思ったよ(笑)。
今ヒップホップだソウルだ、オールドスクールだニュースクールだっていう前に、アフリカから奴隷としてつれてこられた黒人がブラジルに行ってカポエィラが始まった様に、アメリカの中でもアフリカ系アメリカーナ、アフリカ系ブラジリアンがいて、ミシシッピとかオハイオ、ニューオーリンズに行けば独自の音楽があるし、ゴーゴーも今もワシントンに根付いているし、ジャマイカに行けばレゲエだし、ニューヨークだろうがロスだろうが、そういう分からない部分が一緒になってしまいがち。日本でも大阪っぽいロック、九州っぽいロックってあるでしょ。その土地によっての違いがアメリカにもいっぱいあるんだ。もっと言ってしまえばマサイ族流れ、ズールー族系なのかとか。俺は「RIZE」を見るとそういう部族の直系の踊りなのかなっていう風に感じてしまう。だから、ほんとはヒップホップだ、とかって置き換えないほうがいいのかもしれないけど。
※注:インタビューにおいて「初期のブレイクダンス」を「プエルトリコ人がつくった」というように表現されていますが、(ブレイクダンスが一度下火になったその後)ニューヨーク近辺から世界的に隆盛したブレイクダンスシーン(それをSEIJI氏は「初期のブレイクダンス」シーンと表現しています)を支えていたのが、それまでのSEIJI氏の認識であった”黒人”らではなく”プエルトリカン”らが中心となった社会(コミュニティ)であった、ということを意図しています。(「カルチャーとして担っていた」という意味でSEIJI氏は「つくった」とご発言されたものを、編集上『創った』という表現をとってしまったため、「創設した」(=オリジナルに開発した)という意味にも読めてしまい、読者へ曖昧な印象を与え兼ねないのでここに注記します。)
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