TDM - トウキョウダンスマガジン

TDM Interview
〜映画『RIZE-ライズ-』監督デヴィッド・ラシャペル〜
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TDM Interview〜映画『RIZE』監督デヴィッド・ラシャペル〜
アメリカ・サウスセントラル発祥のダンス・KRUMP(クランプ)をテーマにした映画『RIZE-ライズ-』。2006年お正月第2弾の公開を前に、既にTDM BBSや口コミで話題となっているこの作品は、KRUMPに魅せられた若者たちの純然たるドキュメンタリーだ。今回3年間という時間をかけて撮影に臨んだのはファッション・フォトグラファーとして名高いデヴィッド・ラシャペル氏。“被写体の生命力を120%引き出す”と表されるほど、生き生きとした被写体の表情が絶大な人気を誇っているアーティストだ。そんな彼の初映画監督作品として被写体に選ばれたKRUMP、その魅力、アートの世界についてラシャペル氏からTDM読者にむけて言葉をもらうことができた。
■今回の映画の中で一番撮影したかったのはダンスだとおっしゃっていますが、KRUMP(クランプ)というダンスに出会った時の第一印象はどんな感じでしたか?

デヴィッド・ラシャペル(以下D)
もともとダンスは大好きで、最初にカメラを持った時の被写体もダンサーだったんだけれども、『こんな風に身体が動くなんて!』っていうダンスに出会ったのは今回が初めてで、それが第一印象ではあったんだけど、それよりもダンサー達の人生“生き様”みたいなものを知って、ダンスそのものの意味というものを、より深いものに思えるようになった。本当にサバイバル(=生き延びる為の踊り)なんだって思ったし、スピリチュアルでアフリカの歴史、文化に根ざした踊りであったり、本当に抑圧の中から産まれた踊りなんだけれども、同時にそれに如何にして打ち勝って、そういうものから『RIZE(=這いアガる)するか?』って事を象徴しているダンスでもあるんだよね。ネガティブなものをポジティブに変えていく。彼等はGETTOな環境で暮らしているんだけれども、そういう中から、美しいものをダンスというアートフォームを通して作り上げていく。それが素晴らしいものじゃないのかな。
■ダンスシーンではマイケル・ジャクソン等のダンスが影響を与えていました。監督も今までにいろんなダンスと触れてきていると思いますが、今まで携わってきたダンスとはどんなところが違いますか?

D
今回のKRUMPERS等を知るキッカケを作ってくれたのは友達で、結果的にはこの映画の製作パートナーであり、プロデューサーのリッチモンドとトーン という兄弟が今回の映画を作ったんだけれども、この2人に『いい踊りをしている子がいるからPVに使ったらどう?』って言われて見に行ったんだ。その2人は15歳の頃にマイケル・ジャクソンのバックダンサーであり、振り付けをやっていたんだよ。面白いのはこの映画を通してKRUMPというスタイルを知った様々なミュージシャンが、彼等をPVで使っているんだよね。マドンナやミッシー・エリオットのVIDEOでも使っている。そういう意味では『ダンサーというのは変わらないんじゃないかな?』って思うよ。踊るっていう事はとても美しい行為で、どのダンサーも決して『お金を儲けよう。』って思って踊り始めるんじゃないと思う。きっと『身体で表現しなければいけない。』っていう気持ちにかられて踊り始めるんだと思うから。
■今回をキッカケに、よりダンスを深く知ったっていう訳ですね?

D
今回ダンスに出会った時に、今までに見たもの、触れていたダンスとは全く違うなぁ〜って思った。いろんな物語を綴っているダンスであったり、アフリカの歴史に根ざしたダンスであったりするわけで、ダンサーの人生を知れば知るほど深いものになっていって、それは撮影中にも感じたよ。“踊る意味”みたいのが彼らの人生を知ることによって分かってきて、ダンス自体が深いものになった。フェイスペインティングとかダンスの動き自体も、自分の目からしたらアフリカの伝統的なものを感じた。彼等自身はそれを知らなかったんだよね。それが自分のDNAに入っていたんだなぁっていう話にもなっていたけれど。それでいてオリジナリティがあるんだよ。そういった部分が凄いと思う。
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