率直に言うとやっと新しいのが出てきたなって感じ。"シェイク"が流行った時と違って、映画の中のシーンでも分かるとおり、やっている人数が多いんだよね。やっている人数が多いって事は、何でもそうだけど、どんどん洗練されてくるんだよね。逆に言えば人口が少ないと、単なる流行で終わっちゃうから。 だから俺は、流行で終わりそうにないなって思った。

スタイル的にはブレイクダンスとかストリートダンスの要素も入ってると思うけど、独自の基礎があるよね。例えば、ウィンドミルでいうと、かかとがフレックス(足首からつま先を直角に曲げた状態)になってるとかっこいいじゃん。でもバレエの先生からすると、何でポイント(つま先を伸ばした状態)じゃないのかしらってなると思うし。それと同じで、クランプにはクランプのかっこよさがあるんだよね。だからアレはアレで基礎があるんだと思うよ。練習しなきゃできないことだし、めちゃくちゃやってるように見えるけど、カウントとか見ると同じ繰り返しがあるし、｢ぁ、これ練習しなきゃいけないんだ｣ってわかった。うまい奴はリズムを外してないけど外してる人もいる・・・力で踊ってると外れちゃうしね（笑）。でも・・・疲れそうだよね(笑)。ブレイキンと一緒で、バっとやってバッと終わるし。あれはおっさんには無理だよね(笑)。他にはまっているものがなかったらやっていたかも…?

そりゃまだ差があると思うけど、でもあと5年もしたらわかんないと思う。クランプ自体もまだ1、2年のものだしね。日本の最初のハウスも、センスはいいと思ったけど、どうなんだろうって思ってた。でも10年もたつとアメリカ人に張れる日本人ハウサーも出てきたしね。だからクランプもそうなってくるのかもしれないね。新しいジャンルとしてちゃんと確立されてるものだと思うよ。

まるっきり別の世界から新しいものを創り上げてくるっていうのは、アメリカはさすがだなって思う。逆に言うと日本がそれは足りない部分だね。そういう意味でも本当に新しいものがやっと来たかって感じ。 俺の感覚なんだけど、いつも踊りの流れはNYとLAの交互に来ていると思ってる。例えばニュージャックスウィングはLAから出てきて、ヒップホップのニュースクールやハウスはNYから出て来て…。その後しばらくなかったけど、また今回ロスから出てきた…みたいにね。個人的にはどっちかっていうとロスのダンスが好きなんだよね。昔からよく行ってて、当時は週に3、4回LAのダンサーが集まるクラブがあったんだ。アメリカって自分を磨く場所だから、誰かの真似じゃダメなんだよね。マット買って駐車場にひいて、その日のバトルに向けた詰めの練習をしてた。自分の得意な物は何かなって考えるようになっていったよ。

それだけ広がったものだから、別にいいとは思うんだけど、ただフリだけを追って見栄えのよさだけになっている様に見えちゃう時があって。例えば、リズムをこうやったから上手くなるとか、ランニングマンは誰だってやれば出来るんだけど、一人前になるまでには何年もかかるじゃない。そういう上手く踊るテクニックの練習ではなくて、フリをもらってかっこつけて踊っているだけになっているダンサーもたまにいるから、なんか研究されてるものではないイメージを持っちゃう時があるよ。

そう考えてみても「RIZE」はやっと本物が来たかなって感じた。実際にバトルをやっているところを知らない人が入っていったら、恐いし、威嚇してるし、「このやろー!」ってやっていると思うけど、本人はきっと楽しんでいると思う。昔はよくポップも言われたもんね。相手を威嚇してるって(笑)。でも踊ってる本人は怖い顔してそれが楽しいわけよ。周りは怖がっているかもしれないけど本人は楽しいんだよ。