TDM - トウキョウダンスマガジン

RICKY・文化としてのダンスを目指した伝道者
個人のモチベーションが下がることはないですか?
無いですね。今は昔と違ってダンスで踊って食べていける時代だから、凄く良い環境になってる。でもこんな時代に育ったからこそ「よっしゃあ、広げてやる」っていうことを思っていた。僕らのおじいちゃんってストリートダンスの事を知らないでしょう。それって歴史が無いからなんだよね。あと30、40年経っておじいちゃんになった時に、僕らが逆に伝えてあげられる。そうすればTAPやバレエみたいに歴史が作れる。だから今は、子供達も知っているし、みんなが知るようになった。ダンスが上手い下手でなく、気持ちの面ですごい広がってきているね。

これってイイ時代だよ。あと20年、30年もすればダンスは文化として成り立つんだよ。きちんとした流れができる。でも、僕らがやっていることはまだ30年、いや50年たりないな。
感触としてはどうですか?
ああ、すごいイイですよ!最高だね。だって子供達は皆、知ってるもん。やってきて良かったと思ってる。もちろん僕達だけがやってきた結果じゃなくて、まわりの音楽や、ファッションだとかを含めて広がってきたんだよ。だからどこでも熱く語りたい。そういった今までの流れや、やってきた活動等を。
修羅場はありましたか?
修羅場はいっぱいあるよね(笑)。一人で10分間、大阪のアメリカ村でショウをしなければならない時があって…隣で金魚すくいはやっているし、餅焼いてるし。そんな環境で一日5ステージだよ。それはつらいよ。福岡のCM撮影では、七福神の恵比寿さんの格好でゲッダンするんですよ(笑)。あとは大雨の野外で観客が2人だけしかいなかった時。そんな状況で無理矢理踊らなくちゃいけなくて。でも今日は無理っていうとギャラもらえないから、そのために「やります!!」って(笑)。で、ブレイキンやったんだけど、雨ですべってステージから2、3人落っこちたんだよね。
それは肉体的な辛さですね。精神的に辛いのはありましたか?
精神的にキツかったのは、今から約17年ぐらい前だけどダンススタジオのレッスンで 「じゃあ今からブレイキングをやりましょう!」って言うと「アタシそれいいです」 とか言ってみんな帰って行った時かな。もの凄く辛かったね。その時はブレイクダン スなんて「なんだそれ?」って感じだったもん。ウインドミルをする人間なんて日本 に4、5人しかいなかったし。カッコイイ、悪いっていう以前に認知されていないの。だから、ブレイキンで床に入るのは今でもトラウマになってる。でも、僕の辛い話なんて無いっていったら無いよね(笑)。笑い話しになる程度だよ。

だって好きなダンスをしてる上での事だから少々の辛さでも、辛いとは思えないでしょ。僕なんかは恵まれている方だよ。好きなことで充分に飯を食えて。僕の上の世代とかになると、戦後間もない人ばかりだからね。今は選ばなければ何でも食える時代じゃない?一生フリータ−でも食えていけるじゃない。自分の時は親とかから、「何でもいいから働け、とにかく働け」って言われて、そんな時代にダンスに出会ったわけですから。でも40、50歳のサラリーマンの人達の中には「俺は何がしたかったんだろう?」っていう人もいると思うんだよね。それに比べれば、そういった意味では、苦しくてもこれは辛いよいうのは無いね。
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