TDM - トウキョウダンスマガジン

2004.10.27(WED)・28(THU) SLAVE@SPILAL
アーティストのバックダンサーや振り付け師としてダンス界の第一線で活躍するメンバーが多い。そんな彼らのクリエイティブの発現の場たる自主公演「SLAVE 2004」が、1年8ヶ月の沈黙を破り2004年10月に始動した。
今回のテーマは「本質 〜GET REAL〜」。何もかもさらけ出した人間の“ぶっちゃけ”な部分をダンスで表現するというもの。“エロスの象徴”のような演出で始まり、「何が起こるのか?」と思わせる雰囲気に会場は包まれていた。薄暗い照明の中で、男女が物静かに絡み合うシーン。人間の感情や欲求の一面の表現になっている。無機質な振る舞いをするダンサーが、非現実な空気感を漂わせている。全ての出演者が抽象的な空間を作り出す。第一章の盛り上がりは、美しい肉体を持つ男性がクオリティの高い内容のダンスをフェロモン満載で踊るユニゾン。会場のイメージと照明のタイミングなど、人間の視覚に工夫を凝らした演出になっていた。
案内人のDRAG QUEEN(MARIA)に導かれて次の会場に誘導される。これも新しい演出だった。案内された先は、隣接するもう一つの会場。ステージには華麗な衣装を身にまとった女性陣ダンサーが姿を現す。誘導をされた観客は、これからのステージ展開にワクワクしながら、ミステリアスな空間に連れ込まれた気分。テーマパークのアトラクションにでも招待された気分。特設ステージや映像や照明で、いつも見慣れていたクラブを一転して別世界へ変貌させている。 ショウタイムは「ブロードウェイのミュージカルの日本バーション近代化」(?)とでも説明すればいいのだろうか? 華のある女性ダンサー陣が、煌びやかなステージを演出する。男性客にとっては「何処に目をやっていいのか?」と思えてしまう程釘付けになってしまう内容だ(これも「リアル」)。

数多くの展開を経て、様々な世界観が表現されていく。多数のTV画面を一面に張りめぐらし、映像で無機質なイメージを与える。「何かのために備えているような……」、「構えているような……」、感情を殺しているようなイメージ。照明効果を生かして一瞬に見せるインパクトのある一画面。 世界観のこだわりの一つとして、ファッションショーのように華やかなで自分のイメージに合った衣装を上手に着こなし、ステージをふんだんに使った構成。各ポイントに魅力的な切れのあるダンスを斬新に織り交ぜていた。

王道のHIPHOPの場面もあれば、ショウケースの中で見せたピアノのソロ演奏もあり、良い雰囲気を作っていた。ピン照明でライトアップされる中での演奏は会場の空気が緊張する瞬間。この時のピアノの一音一音は、最後まで空間に溶け込んでいくような気がした。 ステージ上には透明なビニールで作られた空間が設置されていた。その中は、鎖された世界。スチームを使った演出や、スノーマシーンで演出する等、面白い使い方。ボディーで産み出す、見せるリズムと空気。
最後は、フルメンバーによるフィナーレ。今回の企画に賛同した様々なアーティストのコレオグラファーやバックアップダンサー、各種アーティストがジャンルの枠を超えた作品を踊り切った気持ちで一つになっている。 「SLAVE」の結成は2001年夏。企画・演出等の運営は3人のダンサーYAS.、GANKO、AKIKOと、グラフィックデザイナーのTAN、計4人のメンバーで行っている。趣味趣向もさまざまな個性の強い4人が集まり、今までに見たことのないダンスエンターテインメントを創ろうと集結したもの。今年の「SLAVE」もそんな「今(REAL)」を生きるメンバーで構成されていた。
'04/12/03 UPDATE


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