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VERONICA / Milly 〜強く、美しく。〜
CHITO 〜人生ヒップホップ 脳内パラダイス〜
“美しさ”を競う大会、ミス・ユニバース・ジャパン。毎年“美”の頂点を決めるべくファイナリストの集まる大会では、さまざまなテーマと演出が用意されている。今年4月3日に行われた大会の表舞台ではなく、裏舞台に注目。ファイナリストにダンス指導をしたジャズダンサー、ベロニカ”と、アートディレクターとしてフランスから来日したミリーへのインタビューの模様をお届けしよう。女性として、美を思考するプロならではの感覚で“美しさ”について語ってもらった。

VERONICAVERONICA

日本人の父とスペイン人の母をもつそのルックスから、¥ショップ武富士、JRA、ポッカ、evian、など大手 CM、ポスターに起用される。2004年ミス・ユニバース最終選考まで選ばれた経歴をもつ。アーティストバックダンサー、PVにも数多く参加。2005年よりKETZとのパフォーマンスユニット「VEKROTZ〜ヴェックロッツ」として国内外のクラブ、ラウンジで話題を集め、活動の幅を広げている。

MillyMilly (ミリー)

DIVA DANCE FASHION ENTERTAINMENT代表。15年の経験を持つ、国際的な舞台で活躍 するパフォーマーとコリオグラファー。 10年前から「ミス・ユニバース・ジャパン」のコリオグラフ・演出を担当。また、そ の他にも「The Crazy Horse Paris」や「The Cabaret of Monte-Carlo」の舞台で活 躍。

※ミリーのインタビューはこちら

ミスユニバースジャパン・ファイナリストの経験。 

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まず、もともとミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストの経歴を持っているけど、参加してみてどうだった?

VERONICA

あれは私の知らない世界だったなぁ。ダンスってステージに立つと綺麗だけど、その裏では汗だくだったり足がぼろぼろだったり、努力の姿があったりするじゃない?でも、ミス・ユニバースの世界は、裏も綺麗なんだ!って思った (笑) 。あと、“強く、美しく”っていうイメージが強いかな。

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大会に向けてのトレーニング中も、常に審査されているわけでしょ?どういう点を見られてるんだろう?

VERONICA

ん〜。それぞれの美しい華はあるけれども、“ミス・ユニバース日本代表としての華があるかどうか”、かな。世界に向けて「今年の日本の花はこれですよ!」って人にあげたい花を持っているかどうかだと思う。

TDM

大会はどういう仕組みなの?

VERONICA

VERONICAミス・ユニバース・ジャパンを決める大会は2時間のエンタテイメントの世界。数回のジャッジタイムがあるんだけど、そのジャッジとジャッジの間に必ずショウケースがあって、それをミリーさんが振付するの。そこでは彼女が日本に連れてくるダンサーだったり、私も過去2回ほどダンサーとして出させてもらったこともあるよ。そのショウケースでは、前回の優勝者も出てきたりするし、ファイナリストを迎え入れる演出の役割もある。要は、ステージに立つために、ウォーキングやインタビュー、そしてここで必要なダンスは“上手く踊る”って言うことではなくて、彼女たちがただ歩いて出てくるだけではなくて、ショウとしてさらに盛り上げるためのダンスだよね。彼女たちがステージで表現するっていう目的でのダンスが必要なのかなと思う。

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ミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストになって変わったことはある?

VERONICA

いろんな人と知り合えたことかな。こうしてファイナリストにダンスレッスンしてるのも、そのつながりだし。

今回はミリーさんが来日するまでに、ある程度踊れるようになっておくのが私のレッスンの役目。大きなステージに立ったことも踊ったこともない子たちだからね。でも、皆すごく集中してて本当に頑張ってるよ。

TDM

ミリーさんってどんな方?

VERONICA

結構細かいところまでこだわる。あと、面白いものを創るなって思う。彼女もダンサーだったから、作品は一般の人にもわかりやすいんじゃないかな。

TDM

ずばり“美しい”ってどういうことだと思う?

VERONICA

素敵だなって思うこと、かな。外見だけではなくて、言葉遣いだったり、仕草だったり、歩き方だったり、人への思いやりや接し方で、「素敵だよね」って思われたら、「あ、美しいことをしてるのかな〜」って思う。 でも、美しくいるためには努力がすごく必要。だからさっき“強く、美しく”って言ったけど、自然と強くないといけないのかなって思う。お化粧や服、態度や言葉遣いも「何でもいいや」ってルーズになるのは簡単。

でも、スウェットを着て、すっぴんで歩いていても、美しく在りたい。そういう雰囲気かな。そこでだらしなく歩いてたら、だらしなくなるけど、素敵に歩いていれば、「スウェットでも素敵なんだ」って思われる。逆に綺麗にお化粧していても、変な歩き方だったり、だらしないと、素敵にはならないしね。

ジャズダンサー・VERONICA。
自分にずるくできなくて苦しんだ。

TDM

そうだね。では、ジャズダンサーとしてのエミコに質問していくね。今までいろんな厳しい状況を体験してきたと思うんだけど、今もこうして踊っていられる為には、どういう想いで乗り越えてきたの?精神的な強さなのか人間性の部分なのか・・・

VERONICA

ジャズの世界って踊りの中でも特にそういう厳しさが現れてる気がする。というのも、ジャズって地道な踊りっていう気がするのね。もちろん他のジャンルも地道なんだろうけど、特にジャズはすごく基礎が大事で、何年もやってやっと形になって、そこからどんどん広げていくっていう地道なジャンル。

やっぱりついていくのに必死で、そこでやって生きたいのに必死で、ふと友達から「今のあなたは嫌い」って言われたことがあって、ハッと気づいたことがあったり・・・。だけど、それだけじゃ割り切れない時もあった。当時は自分もがむしゃらだし、「そんなこと言ったって、やりたいんだもん!」って思ってたし、同時に、人としてそういう風に思われた自分を反省したりしたね。それが、専門学校を卒業した頃かな。でも、将来の道は何もない、自分で作っていかなきゃいけない・・・それでここまでやってきたけど、何でやって来れたかって言うと、やっぱり“ダンスが好き”ってことなんだよね。その気持ちには損得がないの。

VERONICAたぶん私は、すごく不器用なんだけど、自分に対してずるく生きれないから、1個のことにもすごく時間がかかったと思う。“ずるい・ずるくない”っていうカテゴリも変な言い方なんだけど、周りにではなく、自分に対してって意味でずるくできなくて苦しんだ。でも、今は、KETZさんたちとああやっていろんなことができたり、いろんなステージに立たせてもらったりする時に、「あ、私はずるく生きてこなくて良かったな」って思える。もし、自分の信念に反することをしてたら、もしかしたらKETZさんみたいなキーパーソンとなる人たちにも会えなかったかもしれない。

TDM

KETZさんとはどうやって出会ったの?

VERONICA

たまたま仕事が一緒になったの。でも、それまでにずっとKETZさんと一緒に踊ってみたいって思ってて、その仕事でKETZさんと一緒って聞いた時に、「一緒に踊れるんだったらやりたい!」って思って引き受けたの。でも、自分がダンスで何かをする時って、結構そういう選び方をしてきたような気がするな。

大事にしたい“人への思いやり”・“第十の目”。

VERONICA

そもそも、ダンスで食べれるとは思ってなかった。ダンスはそういうカテゴリじゃないというか。逆に、好きなことだけ選びたいからこそ、気持ちの面でも、自分の技術を得るため、自分のなりたい様に踊るために、頑張って苦しいことも通ってきた。レッスンも発表会も大変だったし、いくつもそういう大変さを経験してきたから、現場の大変さにも対応できるようになったしね。でも、好きだったらやめれないっていうのが大きいかな。

TDM

そっか。今のその環境をより良くしていくために気をつけていることはある?

VERONICA

VERONICA人を思いやることかなぁ。たぶん昔は、体育会系じゃないけど、先輩に気を使うっていうところから始まってる感覚かな。要は一人で踊っていくわけではないから、集団の中に入ったときに、円滑に回るように考える。これは自分を居易くするためにも、相手を居やすくするためにもっていうところから・・・自然に考えがそうなってた。これはダンスだからっていうことではなくて、人に助けられてるっていう感覚が多いと、その人への感謝や尊敬の意をこめて、あとは (ダンスが) 大好きっていう想いになると思う。

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ダンサーである前に人としての部分でそうかもね。では、今までいろんなところで作品を創ってきたと思うけど、その作業としては何から始めるタイプ?

VERONICA

イメージかな。曲を聴いてて、「これを作品にしたい!」って思ったり、何かを思い出したり、自分が踊りたくなるような曲のイメージだね。

そういうときに大事だと思うのは、“第三の目”かな。・・・むしろ“第十の目”くらいかもしれないけど。1つは照明を見て、1つは音を見て、1つは全体を引きで見て・・・っていう、全体の画を見る力かな。でも、その画を形にするのはすごく大変。私、混乱しちゃうもん (笑) 。

TDM

人からではなくて、自分の中で、「自分ってこういうことで輝いてるなー」って思える瞬間ってある?

VERONICA

クラスに手応えを感じた時かな。ターンができなかった子ができた瞬間は、「よしっ!」って手を叩きたくなる。踊り手としては、お立ち台とかで「好きに踊って」って言われて何も考えずフリーに踊ってる時も好きだし、振りをもらって踊る時の集中力も好きだなぁ。

TDM

じゃあ、逆に人を見ていて心を動かされる瞬間ってどういう時?

VERONICA

その人が踊ってる時のすごさ、パワーだったり、表現力かな。

私が踊りを始めるきっかけになった人の、卒業制作みたいなものを高校生の時に観て、「ゥワァッ!」と思ったのは覚えてる。専門学校の毎年踊るナンバーで、私も卒業する前に踊ったんだけど、その作品を先輩がやってるのをビデオで観た時に思ったんだよね。

TDM

そうだったんだ〜。ほかに、精神や肉体の面で気にしてることってある?

VERONICA

あんまりストイックには考えてないけど、コンビニのものは食べないかな。でも、体重制限もしてるわけではないよ。あと、精神面ではすごく弱くなるときがあるけど、それはそれで認めちゃう。ダンスが日常で成り立っちゃってるから、「弱くなってても明日は来る・・・じゃ、いいや!」「辛くてもこの本番は来るし、やるしかないんだ!」って思っちゃう。

TDM

印象に残ってるショウってある?

VERONICA

KETZさんと最初にやったショーは思い出深いかな。Chiiちゃんやキョーちゃん (KYOKO)、ポッパー4人とでやった奴。違うジャンルの人たちがいて、あれはすごく覚えてる。あとは、初めてKETZさんと2人でお立ち台に立って踊ったときに、「あー、私こういうの好きだわー!」って思った (笑) 。

TDM

自由に踊るのが好きなんだね (笑) 。

VERONICA

VERONICAそうだねー (笑) 。でも、最初はそんな自分に気づけなかった。やっぱり、ダンスのソロってショウタイムのソロしか知らなかったから、でも、ショウタイムのソロも30秒とかだけど、20分間好きにできたりすると、構えずに素で踊れる。最初はウォーミングアップ的に踊ってて、もちろん曲にも合わせるけど、フロアのお客さんの状態もあるから、いきなり出てガン踊り!っていうよりは、一緒に温めてって、お客さんが慣れた頃に、ガーって踊って・・・で、去っていく、みたいな (笑) 。その流れがすごく好き。逆に30秒のソロを見せてって言われるほうが、困っちゃう (笑) 。

素敵なパーディーにダンスで美しい華を添えていきたい。

VERONICA

でも、今こうしていろいろ聴かれてて思ったけど、私って意外に何も考えずに毎日生きてんだなーって思っちゃった (笑) 。

TDM

素で生きてるんだよ。それしかできなくて、そういう環境があるってことはそれで生きていけるってことだよ。すごい魅力だと思うよ。そんなベロニカが踊る時は、どういうこだわりを持って踊ってるの?

VERONICA

“私のコンテンツ”っていうものをすごく必要としてくれるところに居たいって思う。そこに対して私の魅力を全部出したいし、参加してる実感を味わえる。

TDM

今後はどういうところで踊っていきたい?

VERONICA

ダンサーじゃない一般の人がやってるパーティーとかかな。素敵な人が集まる素敵なシチュエーションで踊る、素敵な私で居たい、みたいな (笑) 。もしかすると、それを一般の人が見てもダンスとは認識しないかもしれない。「あ、ダンスなんだ」ではなくて、パーティーの演出の一つというか。気持ちいい音楽とお酒とシチュエーションがあって、皆遊ぶことが好きな人ばかりの素敵なパーティーってすごくたくさんある。

まず、そういう場所にダンスを取り入れるとなると、「どんなダンスするの?」ってなる。ラグジュアリーなパーティーにはダンスはアクティブすぎるイメージがあるけど、「ダンスもエレガントに華を添えることができるんですよ、そういうダンスもあるんですよ」って伝えていきたい。「あのパーティーのあの人たちは良かったよね!」って思われるためにも、そういう伝手も必要だし、まだまだダンスはマストの要素ではないから。あとは一度その演出をやると次はもうできないとかね。でも、そこをあえて定着させたい。今私がやってることは私のやりたいことに近いことではあるんだけど、そういう需要がもっと増えるといいな。

VERONICA自分の踊りの面でも“美しさ”が関わってくるけど、本当にジャズダンスをやっててよかったなって思うよ。バレエの基礎から始まって、ターンが綺麗に回れるようになって、綺麗なポージング、綺麗な足裁き、つま先まで伸ばすとか、美しいラインや動き・・・やっぱり全部美しさに繋がってるんだよね。自分がこういう風に踊りたいって思った時に、ジャズダンスをやっててよかったなって思う。この間、たまたま私に初めてジャズダンスを教えてくれた先生に会って、お礼を言ったのね。「私にジャズダンスを教えてくれてありがとうございます。私が今踊っていられるのは先生のおかげです。」って。先生、泣いて喜んでくれてたな〜。

TDM

素敵なお話だね。では、最後に、これを読んでるダンスが好きな子たちにメッセージをお願いします!

VERONICA

やっぱり、好きだって思う気持ちと、楽しいって思う気持ちを大事にしてほしいと思う。いろいろ大変でもね。やっぱり、続けるってことが一番大変だから。
interview & photo by AKIKO
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