TDM - トウキョウダンスマガジン

OZ ・ DANCE界の格闘家
その時OZさんの髪ってすごく長かったですよね。誰の影響なんですか?
昔から髪を伸ばしてて、東京に来る時に切ってしまったんやけど、15歳の頃に大坂で一緒に遊んでたブーヤトライブ※っていう連中も同じような髪の毛にしてん。そのブーヤっていうのがメジャーデビューをして、ワールドツアーでライブをしに日本に帰ってくることになったんや。エムザ有明って言うところでね。今のディファ有明。俺はそれを見に行ったんや。久しぶりに来たからっていうことでSAMさんもJUNさんも皆おったかな。俺が15歳ぐらいの時にブーヤの面子なんかと遊んでた時に、あいつらも髪の毛長かってん。で、パっと見たら、4年ぐらい経っていたのに、4年前とまったく変わらずに4年分の髪の毛が伸びとんねん!!それを見た時に自分の気持ちの中で忘れているものをちょっと思い出したんや。その忘れていたものって言うのは大阪のディスコで経験してきたことや、感じさせてもらっていたこと。

東京に出てきた時点で仕事として踊りをずっとこなしてたんやけどディスコに行く時も何をする時もプロのダンサーとして気持ちが強くて、アンダーグランドであるべき部分って言うのが少し薄れてたんや。それで、俺がPOPをやっていて一番初めに見た日本人以外のショウタイムが、エレクトリックブーガルズのスキーター・ラビットとブーヤトライブのドナルド・ディー※。この2人のショウを15歳の時に見て、もう完璧にPOPの世界にズドンとはまってん!!POPを始めたきっかけやね。そのブーヤのライブを観てから髪を10年間伸ばし続けたね。

切ったきっかけは伊原道場の深津飛成(ふかつひなり)っていうキックボクシングの日本フライ級チャンピオンがおるんやけど、俺が原宿でお店やっていた時に良く来てくれて、チケットを持ってきてくれたんや。「遊びに来てください」ってね。観に行ったら踊りをやる前の、ずっと空手をやっていた自分の何かが出てきたんやなぁ。それからというもの、今度はキックの世界にバッと入ってしまったわけ。一回、髪が長いまま、試合をしたことがあってね。もう試合どころとちゃうねん(笑)。練習もできへんからね。それで髪を切ることにした。それともう一つ理由があって俺は洋服の買い付けでLAとかにも行っててその時にブーヤのメンバーのポールに偶然にも出会えたんや。その時はもうキックをやっていたから髪を切ろうとは思っていたんやけど、「あれから10年間俺は切らんかったぞ!」っていうのをブーヤのメンバーに見てほしかったんや!その思いが通じたのかな…そのメンバーに本当に会えた。さすがに運命みたいなものを感じたね。
※ブーヤトライブ:LAのRAPグループ。元々ダンサー出身で、POPダンスが日本に入ってきた1985年頃、来日し現在の大御所ダンサーに多くの刺激を与えたアーティストである。

※ドナルド・ディー:ブーヤトライブのメンバー
OZさんのファッションへのこだわりは?
簡単に言ったらカリフォルニアかな。ファッションの波や流行というよりも、ライフスタイルとしてのカリフォルニアを俺は見てるから、どんなに最新の流行を着てても、そいつにライフスタイルっていうものが無かったら、それはファッションで終ってしまうやん?俺は金で買えるものには興味がないし、貴金属とか車とかって言うのはライフスタイルというよりもステータス。そういうものよりも気持ちや友達やキックとかいろいろなものを含めたライフスタイルを考えていきたい。カリフォルニアっぽいカッコっていうのはすごくシンプルだと思う。例えば白のタンクトップにリーバイスのジーンズに真っ白のシューズとかね。
ディスコには行っていたのに、CLUBになってからは行かなくなりましたと聞いたのですがそれはなぜですか?
六本木のサーカス※とかキュウ※とかね、あのへんがあったころはすごくディスコにも行っていたし、新宿のセンチュリー※とかにもすごく出入りしていたしね。カポエラのJUNさん、YANAGIさん、SYUさん、ストリートメッセンジャーのヨシヒサクンとかと知り合ったのも新宿やし、KAZUさんと知りあったのは六本木のキュウ。その頃はよく行ってた。そこに俺のおる場所があったんやと思う。でも、年代が変わるごとに俺のいる場所がなくなっていったような気がしたんや。DISCOがCLUBになって、でもそれはCLUBのせいやなくて俺のせいやと思う。気持ち的な部分で見失っててん。自分のいる場所を。そうなっていたのは踊りを仕事にしたのもそうやと思うし、人それぞれ違うけど、俺はそいうふうには今やから言えるけどできへんタイプの人間や思うから。例えば、ダンスのクラスを一週間に5本も10本もできるのはとてもじゃないけどできへんね(笑)。
※六本木サーカス、キュウ、新宿センチュリー:いづれも80年代後半、90年代前半にダンサーの集まるクラブ(ディスコ)として栄えていた。
ダンスレッスンのスタイルっていうのは?
今はね、ダンススタイルの技術どうのこうのっていうよりも、その技術を使いこなせるだけの体を作る。簡単に言ったら、ダンサーをアスリートにしたいのね。競技者としてダンスを極められる人。ラテンとかJAZZとかBALLETっていうのは俺はある意味アスリートやと思うしね。なんでかって言うと、技術部分以外のこともコントロールしてると思う。昔と違って技術や情報はすぐ手に入るけど、その代わりに昔にあったハングリー精神や気持ちの面がすごく不足していると思うねん。だから、それを補う為の筋トレもやり始めてるねん。こんなスタイルのダンススクールなんて、あまりないと思うで。自分の年齢的なことを考えると次の世代に伝えていかへんかったらあかんと思うしね。いろんな形があって、俺よりも年上で良いショウを作り出して、生涯現役の人も結構おるけど、俺はあえて次世代へ伝えていこうと思ってるねん。
座右の銘や、好きな言葉をふまえて、最後に一言お願いします。
 いろいろあると思うけど、あえて一つだけ選ぶんやったら、”一極めるものは全てに通じる”ペケーニョのギロチンチョーク※みたいにね。
※ペケーニョのギロチンチョーク:ブラジルの格闘家アントニオ・フランサ・ノゲイラのニックネーム「ペケーニョ」の得意とする技の名前「ギロチンチョーク」。多くの格闘家が彼の技にやぶれた。
普段イメージとは違い、優しくそして、気さくに語ってくれた。彼のこれからのダンススタイルに注目しつつも、他のダンサーとは一味も二味も違ったスクールにも注目したい。アスリートととしてのダンサー、格闘家としての面。これからの動向が期待される。
2002.12.19のDAB-DAB出演の映像:
movie: 1,501KB 1,501KB
'03/1/7 UPDATE
Photo : Eno-Kid / Text : I.K
← Back123


Back Number