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『Legend Tokyo』主宰 工藤光昭 〜 Make our legend. 〜
『Legend Tokyo』主宰 工藤光昭 〜 Make our legend. 〜
公の大きな大会があれば、そのシーンら盛り上がっていく。「Legend Tokyo」もストーリートダンスシーンの時代に合った需要から生まれたイベントの一つ。二回目となる今回のキーワードになっている「世界観」を彩る作業は、ダンサー自身の表現力をスキルアップさせてゆく。審査員として参加して下さる、ストーリートダンスシーン以外のエンターテイメント業界と、それを取り巻く業界関係者にリアルなシーンを見て頂く良い機会になっている。「誰を喜ばす為に、誰の為に踊るのか。」それが明確になっていけば、ダンス鑑賞を楽しみにしてくれる人が多くなるのではないだろうか。

工藤光昭工藤光昭

『Legend Tokyo』主宰/「SDM」編集長
株式会社ジャスト・ビー 代表取締役
シーンを独特の切り口で伝えるフリーマガジン「SDM」の編集長。 長年にわたるメディア活動の末、2011年『Legend Tokyo』を実現。 ストリートダンス専門のメディア・クリエイターズ・カンパニー「株式会社ジャスト・ビー」代表取締役。ストリートダンスを“流行”として追いかけるのではなく“文化”として根付かせるという一環したコンセプトのもと、古くから数々のダンス・メディアの発起・発行・編集などを手がけてきている。

『Legend Tokyo』主宰 工藤光昭 〜 Make our legend. 〜

ハイレベルな「世界」を集結させる。 

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『Legend Tokyo』も、いよいよ第2回目が近づいてきましたが、まずは今大会開催に関する想いを聞かせてください。

工藤

やっぱり“2回目ということ”は大きいですね。とにかく、みんなが「“レジェンド”とは、どんな大会なのか!?」という認識があって、その前提のもとにスタートがきれるようになった。そのおかげで、より新しい次元のことに挑戦できるようになったと感じています。

前大会は本当に“Legend Tokyo”というアイディアのプレゼンテーションといいますか・・・。とにかく“ダンス・エンターテインメントのコンテスト”と口や企画書で説明しても、なかなか理解してもらえませんでした。そこに追い討ちをかけるように、震災の影響があり、本当に、まずは0を1に変えたイメージでした。(※『Legend Tokyo Chapter.1』は当初3月31日に開催予定だったが、東日本大震災の影響で、7月29日への延期開催となった。)

出展コレオグラファーも、基本的に「SDM」側から声を掛けた人たちでした。けど、コレオグラファー、出演ダンサー含め、全体的に、正直、「何をやったら良いか解らなかった」という方々も多かったようでした。その意見は、大会終了後、非常に多くの方々から聞くことができました。

結果的には、「何をしたら良いのか?」、しっかりビジョンを見えていた方々が賞を獲れたのだと思います。だから前大会で道を切り開いてくれたコレオグラファーの方々は本当に偉大ですよね!

しかし、今年はまったく状況が違う。もう、大会の情報も、実際の映像もかなり出回っていますし、「どんな大会なのか!?」がより明確に伝わってきた。この1年で、一気にコレオグラフのコンテストや舞台でのダンス作品も増えてきましたし、ダンスシーンの認識の1つにもなってきました。

今回、初の試みとして予選大会を開催して、そこで感じたのですが・・・、今年は「こういうレベルの勝負作品を創れば良い!」というのがみんな見えていると思います。だから、より“選ばれた人だけが出れる”というのが、今大会の大きな特徴と変化ですね。

前大会から、引き続き作品を出展できるコレオグラファーは、審査員10人のうち、誰か1人でもベスト5に挙げた方のみ。そして予選大会も当然、審査員方の総合ベスト4以内の方が選ばれています。 広告も、全出展コレオグラファーの「なぜ本戦に出ることになったのか?」という出元が掲載されていて、本当に“確固たる実績にあるコレオグラファーのみが作品を出せる”という感じにしています。

さらにコレオグラファーは、みんな審査員賞クラスなので、当然、勝ちにきてます。結果、出演ダンサー募集オーディションも、かなりの激戦になりました。中には、60人オーディションを受けて3人しか合格しなかった作品もあります。

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“レジェンド”が浸透してきたからこそ、今度はコレオグラファー側も出演ダンサーを厳選できるんですね。

工藤

結果的に出演ダンサーも、それぞれスキルも高い人たちが集まっています。本当に前大会とは別次元のハイレベルな大会になることは間違いないと思っていますよ!

前大会もご好評を頂きましたが、正直、“発表会のハイレベル版”のような部分もあったと思っています。しかし、今回はそれを脱して、本当の“勝負エンターテインメント作品”がリアルに24作品連続する!今度は、皆さん、何が繰り広げられるのか、何を創ればいいのか解っていますから。ようやく真のコレオグラフ・コンテストらしくなって来たという感じです。

これまで、日本のダンスシーンが観たことのないような世界が舞台上で繰り広げられる、観に来た人たちが必ず面白いと思ってくれる、間違いなしの仕組みになっていると思いますよ!

その「世界」を広げるために。 


『Legend Tokyo』主宰 工藤光昭 〜 Make our legend. 〜


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ところで『Legend Tokyo』には、毎回、サブタイトルがついているようですが、今回の「the WORLD we never know」には、どんな想いが込められているのでしょうか?

工藤

大会公式の日本語訳は、「我々の未知なる世界」です。けど、そこには、本当にいろんな意味を込めています。

実は、前大会が終わった後、あまりにも大変過ぎて社内的に「2度とやりたくない!」雰囲気だったんですよ(笑)。大会が終わった翌日、社員1人が僕に辞表を出してきて、大会後わずか3ヶ月で社員3人が辞めました。本当にそのぐらい過酷だったんです。

けど、ブログや掲示板など、本当にたくさんのありがたい反響を頂いて、「あ、やったことは正しかったんだな」と感じれるようになって・・・。

反響の中で1番多かったのは、「観たことがない世界だった」「こんなに素晴らしい世界があった」という言葉でした。 そこで、想ったことが・・・…、今まで、ダンスシーンにあった素晴らしい振付作品や才能、それは今まで“誰も知らない世界”だったんだ・・・って。もちろん、『Legend Tokyo』でやっていることも含めて。

前大会のテーマは“革命”や“維新”。サブタイトルも「DANCE ENTERTAINMENT NEO GENESIS」。まさに“新世紀の創立”が目標でした。オープニングの曲も「龍馬伝」でした。

けど、今大会はメディアの原点に戻って、“この素晴らしい世界を、より幅広く伝える”ということにこだわりたいと思いました。だから、「the WORLD we never know」なんです。ダンスシーンも、世間一般も、“誰も知らない世界”であることを、もう1度見直そうと考えて。

後は、『Legend Tokyo』の見どころのひとつ、各コレオグラファーさんたちが舞台上に生み出す多様な“世界観”も意味しています。前回、MC CHIGUSAさんやTAKAHIROさんに「一晩でいろんな映画の世界を観たような感覚」と言って頂きましたが、本当にいろんな才能が創り出す世界観が、わずか2〜3時間で一気に観れる!それが“レジェンド”の醍醐味だと思っています。

つまり、コレオグラファーは“世界の創造主”。それが、一気に観れる場という意味でも“世界”というキーワードがあります。 だから今大会では、前回以上に、あえてジャンルが多種多様になるように考えました。オファーしたコレオグラファーは、世界観が独特の人、強い人に声を掛けて・・・。本当に、日本のコレオグラファーが持つさまざまな素晴らしい世界が一気に観れるステージになりますよ!

だから今大会のキーワードは“才能”と“世界”。この2つの言葉って考えれば考えるほど、本当に“レジェンド”にマッチしたいろんな意味をもっているんですよ! 

今大会の新しい試みの1つとして、“世界”そして“才能”をキーワードに、3段階に広告キャッチコピーで意味が変わっていくという、ダンスシーンでは初の広告手法をやってみました。

■第一段階
目的:大会に作品を出展する“コレオグラファー”の募集
<キャッチコピー>「世界はまだ君の“才能”を知らない。」
世界=世間一般
才能=まだ見ぬ可能性。

■第二段階
目的:大会出演ダンサーの募集
<キャッチコピー>「ダンスには、まだ僕らが知らなかったこんなに素晴らしい“世界”がある!」
世界=大人数で勝負作品を創るという『Legend Tokyo』自体の出演過程

■第三段階
目的:大会観覧者の募集
<キャッチコピー>「選ばれし“観せる才能”の戰い。それは、誰も観たことがない世界。」
世界=コレオグラファーがステージ上に創る作品・世界観
才能=大会側が世界に伝えたいもの

つまり“世界”といっても「大会側が日本のストリートダンスを諸外国に広げますよ」って意味ではなく、日本のコレオグラファーの高いスキルで創るエンターテイメント、その才能はいろんな可能性があり、素晴らしい世界で、さらにそれは誰も観たことがない世界なんだ、ということにクローズアップした大会にしたい、それが次回の『Legend Tokyo Chapter.2』なんです!


ディズニーのアトラクションが、デパートの屋上にあったら!?


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そういったキャッチコピーや広告に対するこだわりって、どこから来るんですか?

工藤

これは僕が「SDM」を始めた理由のひとつにもなりますが、「観に行くまでに、どれだけ期待させるか!?」、それってエンターテインメントの大切なことだと思うんですよ。

僕、昔から映画の予告編が好きで、一時は予告編を作る人になりたいと思っていた頃もありました。映画って、どんなに素晴らしい内容でも、予告編や広告の展開が失敗したら興行収入は上がらない。どんなに面白くても。

けど、予告編や広告の展開が成功したら、極論、内容がイマイチでも多くの人が観に行く。当然、興行収入は上がるわけです。よく、「全米興行収入No.1」っていうキャッチコピーのものさしがありますが、これって、いわゆる成功ですよね?

つまり、エンターテインメントって、「予告編や広告をどう展開し、観に行くまでにどれぐらい期待させるか」。そこも大切な勝負であり、エンターテイメントの1つだと考えているんです。

「全米興行収入No.1の映画を、明日観に行くワクワク感」、そういった時間を演出するのもエンターテインメントの大切な要素。

『Legend Tokyo』というタイトルもそうです。最初は、「なぜ、ダンスやコレオグラフという言葉が入ってないんだ?」って言われましたが、その言葉が入ったら“既存”をイメージされてしまう。

それよりも、“Legend=伝説”というタイトルが自分の出るイベントに付いていると、みんながテンション上がると思うんです。 タイトルとキャッチコピーを見た瞬間に、どれだけ出展コレオグラファー、出演ダンサーが奮い立ち、モチベーションが上がるか。 お客様がどれだけ大会に対して期待をするか。

出展コレオグラファーの才能や世界観に相乗して、“当日に導くまでものすべて”がエンターテイメントとして成立している。誰もが当日、楽しみでしょうがない。常にそういったことを最大限に意識して、“レジェンド”という全体的なエンターテインメントを創っています。

あと、当日の『Legend Tokyo』大会自体も、休憩中に流れる音楽、大会側の演出、すべて同じ1つの世界観のもと徹底的に統一しています。

僕、ディズニーランドがものすごく大好きなんです。別にミッキーマウスが好きなわけではなく、エンターテイメントを人に提供する、プロデューサーとしての視点として本当に“頂点”だと思うんですよ。

ディズニーランドの広告の仕方、入り口の人、スタッフの対応、ゴミが落ちていないとか、全ての周りの雰囲気から、そういうのが全部ある!そこで初めて、人はアトラクションに対して、あそこまで素晴らしいと感じるんだと思います。

逆をいうと、ディズニーランドのアトラクションのひとつが、デパートの屋上に特設されていたとしても、そこまでのワクワク感は成立しないですよね?あれって全部が全部、完全に計算されているからこその素晴らしさなんです!本当に、ウォルト・ディズニーの哲学は凄い。世の中のエンターテイメントで流行るものや良いと思うものって、絶対そういう仕掛けがあると思うんです。

つまり、コレオグラファーの作品がアトラクションのひとつだとすると、それを“デパートの屋上の特設アトラクション”ではなく、“ディズニーランドのアトラクション”にする。それが僕らの役割であり、頑張りどころだと考えています!

『Legend Tokyo』主宰 工藤光昭 〜 Make our legend. 〜

ストリートダンスを広げるため。 


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けど実際、それを実現するために意識していることといいますか・・・、具体的にどういう考え方や視点で、それを実践するようにしていますか?

工藤

僕はよく、“ダンス”という言葉を、演劇やミュージカル、映画、釣り、サッカーなどのほかのエンターテインメントや趣味、スポーツの言葉に置き換えたらどうなるかと考えてみるようにしています。

例えば、『Legend Tokyo』の広告キャッチコピーを作るとき、必ずコレオグラファーを監督に変えたり、ダンスを別の言葉に変えて、まず自分が、それを見て興味をもつか考えてみるんです。

例えば、すごく才能があって、めちゃくちゃ歌が上手いけど誰も知らずに埋もれているシンガーなんて世界中に山程います。誰か良い作曲家がいて、良い売り出し方をしてくれるプロデューサーがいて、人の心に響く歌詞があって、すべて上手く世の中の波にマッチして、はじめて上手いシンガーは、世間が認知する。これって、ある程度みんな知っていることだと思うんです。

けど、これまで、ダンスシーンを取材してきて思ったことが、上手さを競うのは素晴らしいと思うのですが、そこで展開が終わってしまっている。

例えば、歌や演劇のイベントで同じ様に考えたら、僕はどう思うだろうと考えてみました。

役者がストーリーも何もない中で、「俺はこんな上手く台詞が言えるぜ!」っていうステージが2〜3時間、時には一晩中繰り広げられる。きっと、普通は途中で帰っちゃう。友達に誘われても2時間観てられない。プロの役者を目指している人は別ですけど・・・。

つまり、少し興味があって、せっかく会場に足を運んでくれても、行ってみてあまりにもマニアックだったら一般的には引くと思うんです。 だから、一般の人も入りづらいし、辞めてく人も多い。ティーンズは、“大人になったらここは稼げない業界”だと認識しちゃう。

それを変える為には、何か新しい環境を作らないといけない。では、ダンスを一般人が観ても楽しめる世界に変える力をもった人といえば・・・、それが“コレオグラファー”だと思ったんです。

だから、もとはといえば“振付師のコンテスト”をやりたかったのではなく、ダンスを広げる目的の上で、みんなが、ダンスイベントに対して楽しんで帰ってくれるためには、どうしたらいいか、その追求の過程で生まれた話が『Legend Tokyo』なんです。

やっぱり、エンターテイメントとして、せっかく踊るのでしたら、自分のダンスで、お客様や親に喜んでもらう方がみんなも絶対に幸せですよね!

親に喜んでもらうこと。


『Legend Tokyo』主宰 工藤光昭 〜 Make our legend. 〜

工藤

実は5月28日に第一子が生まれて、最近、僕も父親になりまして・・・。改めて、感じていることが、自分は何のためにここまでやって来たかと考えたときに、“親に喜んで欲しい”という気持ちだったんです。

今まで10年間、「movement」の立上げ、「DANCE STYLE」の編集、株式会社ジャスト・ビーの立上げなどをやってきましたが、どれだけめちゃくちゃ一生懸命やっていても、故郷に帰ると、周りからすると自分の仕事は“遊び”に見られるんです。

よくダンサーさんへのインタビューの中で、「昔は、ストリートダンサーは職業として周りから認められていなかった」というお声を聞きますが、けど、それは僕らも一緒。ストリートダンス誌の編集なんて世間的に職業として認めてくれませんでした。 キッズダンスが流行りだして、今、ようやく職業として認めてもらえている感じです。

30歳を過ぎて、結婚もせずにダンス雑誌の編集を頑張っているので、実家に帰ると親戚や近所から「いい歳こいて、工藤の息子は遊んでいる」という扱いでした。けどそんな時、後から聞くと、親が周りに対して、僕が自分にやりたいことに集中できるように、かばって説明してくれていたらしいんです。僕のいないところで。補足的にいうと、うちの親はすごく子供に対しては厳しい人でしたよ。

だから、自分が関わっている世界で、“親が楽しめるものを作ること”がひとつの大きな目標になっているんです。まだまだダンス業界って所得が低いと思うので、実家に仕送りをしている方も少ないと思うんです。やっぱり僕らができる最大の親孝行って、ダンスで親の世代の人が見ても楽しめる舞台やエンターテイメントを創ることですよね。そして、それが僕の一番の原点なんです。

これは『Legend Tokyo』をやっていて1番良かったと思った瞬間の話ですが・・・、僕は、第二部で客席の空いている所に紛れて座ってステージを観ていたんです。そこで、周りにいた出演者の親御さんであろう50〜60代の方とか、普段ダンスイベントには来ないような方たちが、こんなに人が楽しそうに何かを観ている姿は見たことがないっていうぐらいすごく楽しそうにステージを観てらっしゃったんです。

舞台上で行われている世界以上に、今まで見たことがないぐらい周りがダンスを楽しそうに観ている姿、その世界が本当に印象的で、今まで何年間も悩んでいたことが、すべてクリアになった感じでした。

翌日、自分の親から「あれは本当に楽しかった」と大絶賛の電話がきました。次回は、親戚も噂を聞いて来たいと言ってくれています。

大会後、いろんなコレオグラファーさんや出演ダンサーさんと話していても、とにかくみんな「親が大絶賛してくれた、喜んでくれた、楽しんでくれた」、そこをスゴく誇らしげに感じてくれ僕に伝えてくれます。「あ・・・僕だけじゃなく、みんな一緒だったんだな」って・・・。

もちろん、次回『Legend Tokyo』も、そのために精一杯いい大会を頑張って創っています。だから出演される方々も、自信を持ってご両親を連れて来てもらって、一緒に素晴らしい世界を作ってもらえたらなと思っています。

一般の人が感じる“ダンスに参加できない感”。


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老若男女問わず、親御さんの年代でも単純に観て楽しめる。そういったことが実現できた理由はどこにあると感じていますか?

工藤

それは、やっぱり大会の評価の基準にあると思います。僕の親が言っていたのは、「俺はダンスの上手いか下手かは解らない。けど、ダンスを観て楽しいかどうかであれば、俺たちも参加できる」と。

『Legend Tokyo』は審査員も特徴的で、一般生活の中で聞いたことのあるエンタメ企業や団体のトップクラスの方々が観て、「エンターテインメントとして一般の人も楽しめる作品かどうか?」を判断する。この図式が一般の方々に対して「自分たちの目線でいいんだ」という参加感を出しているのだと思います。

やっぱり、今までのバトルやコンテストって、一般の人からすると、「なぜ勝ったのか分からない」評価基準だったと思うんです。それはもちろんダンスを高める目的では大切なことだと思っています。 しかし、ダンスを広げる目的で考えてみた時、一般の人が参加できない“疎外感”を生み出していると思うんですよ。だって、評価基準が解らないと、きっと一般的には「面白くない」という印象になってしまいますよね。

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ひとつの考え方ですが、競技の場合、どれだけ会場中を沸かせて人に感動を与えても、ミスをしてしまえば絶対に優勝はないですよね。それが、エンターテイメントの世界であれば、会場を魅了した人が一番になるという話を最近したことがあります。

技術の微妙な差ではなくて、心に残したとか、感動を与えた、人に影響を与えたダンスがコンテストやバトルでも一番になるという要素をダンスシーンは持っていてほしいなと思いますね。

工藤

そうですね。エンターテイメントにこだわることによって、ダンスはもっと多くの人を惹きつけるものが創れる。ダンスってそこまで魅力があると思うんです!

 『Legend Tokyo』が優勝以外、順位を決めないのも、そういう理由です。この大会には2位や3位、特別賞は存在しません。優勝以外は、細かい理屈ぬきに各審査員の心を1番動かした作品だけが表彰される。評価対象がスキルではなく、エンターテイメントとなった時、それが最も適切な評価方法だと思っています。

”知識の共有”が、新たな道=レジェンドへ導く。


工藤

『Legend Tokyo』主宰 工藤光昭 〜 Make our legend. 〜最近、聞かれるちょっと嬉しいニュースで、『Legend Tokyo』が生まれたことで道筋が見えやすくなり、「将来、コレオグラファーになりたい!」と考えるティーンズたちが増えてきてくれたみたいです。

今までダンスシーンを取材してきて、『DANCE DELIGHT』 が生まれたらチームコンテストが盛り上がり、『DANCE@LIVE』が生まれたらバトルが盛り上がり、『全国スーパーキッズダンスコンテスト』が生まれたらキッズダンスが盛り上がった。

つまり、競い合う公な大きいイベントができればシーンは盛り上がるんだなって。だから、ダンス・エンターテインメントを盛り上がらせるためには、派手な大きい公のイベントで競う環境を作ればいいんだなと考えたんです。

さらに、公に集まって競う世界があれば、「こうすればお客さんが沸くのか」という“技術の共有”が生まれます。

今まで、ダンスシーンを取材し続けてきて思っていたのですが、皆さん、結構、他のダンサーの作品を観に行かないんだなって。そこがすごく疑問だったんですよ。自分が舞台をやりたいから、いろんなものを観に行こうと考える人は意外と少ないんです。

けど何か新しいことをやりたかったら、自分の知っている範囲を広げないと、物理的に無理じゃないですか?ゼロからは何か急に考え出す、思いつくって歴史的に稀だと想うんです。 だから、もっと、みんな他の人が生み出すダンス・エンターテインメントを、いっぱい観ないと、良いものは生まれてこないと思うんです。

けど、『DANCE@LIVE』で気付いたんです。それって競う環境がないからなんだって。昔、バトルは、各地域やシーンで別々に行なわれていました。それが、『DANCE@LIVE』が生まれたことによって、全国規模でバトルに対するスキルの共有が始まりました。このダンサーのバトルが良いとか。ムーブやバトルに対する考え方がヤバいとか。より上を目指す人たちは、有名バトラーたちを研究して自分のスキルに変え、日本のバトラーは世界トップレベルにまでなりました。

だから、『Legend Tokyo』のようなイベントがあると、同じように、コレオグラファーも他を研究する文化が生まれてきます。そして、それが結局、日本のダンス・エンターテインメント全体のレベルアップに繋がるんですよね! 『Legend Tokyo』の映像をすべてWEBにアップしているのも、そういう意味なんです。

やっぱり、今まで、自主公演をやっている人たちは、みんな暗中模索で別々にやっている感じでした。発表会ナンバーは、結局、スタジオに通う生徒のためのものですし。

けど、“知識の共有”ができれば、ダンス・エンターテイメントを目指す人、みんなでよりスキルアップできる。しかも、皆さん“勝負作品”を持ってきているので、人の作品を研究し、どうしたらみんなに受けるんだということを、より切磋琢磨することができる!

だから、『Legend Tokyo』って別に競い合わせることが目的ではないんです。そういう環境を生み出すことによって、いつか、日本のダンス・エンターテインメントが世界トップレベルに認知され、シルク・ドゥ・ソレイユのように、本当に誰も観て楽しめて認知されるダンスのエンターテインメントの形が生まれる。 そのプロトタイプが生まれて後世につながるんじゃないかなって。それこそが“レジェンド”であり、一番の目的なんです!

TDM

『Legend Tokyo Chapter.2』、楽しみにしています。今日はありがとうございました。
'12/08/01 UPDATE
interview by AKIKO
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「Legend Tokyo Chapter.2」
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2012.08.02(Thu)&09(Fri)
選ばれし魅せる才能≠フ戰い。それは、誰も観たことがない世界。 「Legend Tokyo Chapter.2」




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