TDM - トウキョウダンスマガジン

「phonicc」 オーガナイザー jiro  
「phonicc」 オーガナイザー jiro
何かを表現したい人が持つこだわり。その度合いが強ければ強いほど、「マニアック」とも言えるけれど、あらゆるシーンを支えるには、この強さが欠かせない。ここにも一人、その代名詞的存在のダンサーがいる。長年いろんな面からダンスシーンに携わり続け、2007年4月11日、shibuyaNUTSでイベントオーガナイザーを務めるjiro氏だ。この日彼が今のシーンに提供してくれるのは“音楽があるから踊る”ということ。シーンに新風を吹き込む、濃い夜になるのは確かだろう。
jiro「黒さ」が好きで踊りと音楽、文字を使って率直で自分の感性や明確なビジョンを表現し続けているダンサーjiro。

トウキョウダンスマガジンの立ち上げメンバーとして、IT社会の先駆け時代から、ダンス情報を配信してきた。その後は、shibuyaNUTSの発行するフリーペーパー「Dextra」のエディターとして関わり、DJのインタビュー等はほぼ専属。雑誌『DANCE STYLE』では「ダンサー生き様ファイル」でいろいろな角度からダンサーのライフスタイルを紹介、その他の紙面や多数のDVD制作も手がける。今までダンスに関わっている人であれば、彼の言葉を読んだことがない人はいない、といっても過言ではないだろう。現在は音楽カルチャーサイト「notrax.jp」の編集にも携わっており、社会から見る、社会を知ってのダンスシーンの見解や、ダンスには欠かせない音楽シーン、そして彼のホームであるクラブシーンにどっしり根付いていているライフスタイルは、ダンサー兼編集者というバランスを楽しんでいるように思える。

音楽があるから踊る

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まず、今回イベントをやろうと思ったきっかけは?

jiro

きっかけはいろいろあるんだけど、まず“音楽があるから踊るんでしょ”っていうことを見せたい。最近、みんな楽しみ方を知らないなと感じるので。極端に言えば、週末のヒップホップのクラブでお酒飲んで酔っ払ってる女の子の方が、よっぽどかっこいいと思うしね。だから、来てくれるお客さんには“こういう楽しみ方もあるんだよ”っていうのを紹介できればいいかな。

仕組みの問題なのか、空間の問題なのか、DJの問題なのかはわかんないけど、バーの前にずっといて、フロアには出てこないダンサーが多い。だから、そういう人たちをフロアに引きずり出したいね。そうすれば、若い子たちにもクラブの楽しみ方が伝わるし、そういうことを知ってるダンサーを集めたい。

今回久しぶりにイベントをオーガナイズするんだけど、数年前に*「Tabasco」を始めた時は、人に声かけて手伝ってもらうまでにすごく時間がかかった。でも、今だと内容を話す前から「手伝うよ」って言ってくれる人が結構いてくれるから、本当にありがたい。

*Tabasco (タバスコ)
…1997〜2000年、club asiaでレギュラー開催していたダンスイベント。当時のTDMスタッフが多く関わっていた。

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今回のバトルの仕組みは面白そうだね。

jiro

参加者には自分の踊りたい曲を持ってきてもらって、互いに得意な曲でバトルしてもらう。で、5人勝ち抜きで賞金を出そうかなと。ジャッジはお客さん。進行はALMAのHYROSSIさん。しゃべり倒して盛り上げてくれそうなんで (笑) 。

最近のバトルブームで、それまでに比べてソロ重視になったことはいいことだと思う。個々のスキルも上がるしね。ただ、そこで提供されている音楽がもったいないと思ってたんで、こういう仕組みでいこうかなと。

TDM

なるほど。あくまで音楽重視ということかな。

jiro

オレは日頃DJを選んでクラブに行くから、今回のイベントを通していいDJたちを紹介できればいいな。なんとなくshibuyaNUTSはDJの為のハコかなとも思ってるんで、内輪感が出ることなく、みんなが踊り狂ってるような状況に持っていきたい。

いち「DJのファン」として。

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90年代後半からトウキョウダンスマガジンスタッフやクラブイベント運営、現在は主に音楽ライターとして活動しながらシーンを見てきてどう感じる?音楽とダンスの違いはあるかな?

jiro

オレがいるのはあくまでクラブであって、音楽だけ、ダンスだけの人とも違う感覚だと思う。単純に、いち「DJのファン」なんだよね。ほんとに。ダンスをかっこよく踊る、とか、うまくなる、とかっていうことには、そこまで興味はないのかもしれない。

もし、お客さんがいっぱい入ってくれるようになれば、自分の好きなDJにお金が払えるわけでしょ?(笑) 。正直なところ、具体的な目標はそこかもしれない。オレは現場のDJがいて、毎日踊り狂って、それがないと生きていけない生活を送ってきたからね。今は音を作ってるDJが儲かるのは当たり前になっているけど、クラブDJはそうじゃない。彼らがもっと楽に暮らせるようにならなくてどうするの?って強く思う。

DJの魅力。流れの中での驚き。驚きの中での流れ。

jiro


左からSkillz (aka Mad Skillz) , Jiro, DJ Jazzy Jeff
 
DJの世界って本当に深くて、次にどの曲をつなぐか、どの瞬間につなぐか、どの音量でつなぐか、どこの音質をいじるか、それだけでこっちのテンションは左右されるし、楽しくなる。驚きがあるのに一貫した流れがある。実際にクラブではそういうすごいことが行われてることに対して「すげー!やべー!」って反応できている人はあまりいないんじゃないかな。

例えば、ダンサーにわかりやすく言うと、ELITE FORCEのLINKの踊りは“DJっぽい”と言えると思う。彼は徹底的に音を取るけど、取る音をどんどん変えていく。自分の体を動かす場所も変えることで、見る人の意表を突く。そこには驚きがある。あの人もクラブでずっと踊ってるし、やっぱり毎晩のようにフロアで会うダンサーたちには共通したものを感じるよ。オレがかっこいいと思うダンサーはどちらかというとそっちなんだよね。自分もそういう風になりたいとも思うしね。

ダンサーの体の中から、楽しさが動きとなって出てくる瞬間。

TDM

…本当にマニアックだね (笑) 。

jiro

そう言われ続けて10年以上ですわ (笑) 。でも、勝った、負けた、技ができた、っていう世界ではないところで、オレは細々とできたらいいなと思うわけですよ。クラブの中での楽しい瞬間、いいものが出てくる瞬間。音楽をかける側と受け取る側、みんなが楽しんで、その楽しさがダンサーの体の中から違う動きとなって出てくる瞬間。そういう瞬間をオレはいっぱい経験してきたし、もちろん今でもあちこちにある。でも、今のダンスシーンとは切り離されてるとすごく感じる。だから、そこが少し今回のイベントでつなげられたらいいかな。

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では、最後に来てくれる方にメッセージを。

jiro

自分も壊れない程度に全力で楽しい空間を作るので、お客さんは楽しみに来てほしいです。ダンサーもDJもお客さんが楽しんでくれるのが一番楽しいからね。
interview by AKIKO
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2007.04.11 (Wed)
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