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DJ KAZ “FOOT LOOSE VOL.1”〜 束縛されずに、好きな場所へ 〜
DJ KAZ “FOOT LOOSE VOL.1”〜 束縛されずに、好きな場所へ 〜
"ハウスシーンにDJ KAZあり!"と言わしめる程、プレイに定評のある彼が、意外にも初となるMIX CDをリリースした。その名も"FOOT LOOSE VOL.1"。タイトルどおり、聞いていると、思わず足が動き出してしまうような、ダンスミュージックの詰まった1枚が、堂々完成。長年"ダンス"そして"クラブ"という空間をブースから眺め続けてきた彼が、今、この1枚に込めた想いとは…。
DJ KAZDJ KAZ (Project 301)

2005年「LOOP SOUNDS」よりリリースしたファースト・シングル「Tactics#1/Afection」が異例のロングランヒットを飛ばし一躍注目を集める。続く セカンド・シングルは知る人ぞ知る、アンダーグラウンド・ハウスクラシック「It's You」を見事にリメイク。そして今年2月には、UKデビューを果たし日本国内でも話題を集めている注目のR&BシンガーSATOMIの新曲 「Baby Doll」のリミックスも手がけるなど、その活躍は留まるところを知らない。そんな彼のバックグラウンドはダンスシーンにある。ダンスDVD 「KINETIC ARTS presents HOUSE DANCE REVOLUTION -8dancers in N.Y-」への楽曲提供をはじめ、日本のトップダンサー達へのステージ音源提供、アーティストビデオ音楽等を多数手がけ、ダンサー達から絶大なる支持を得ている。DJとしては、ダンスイベントの最高峰「MAIN STREET」、「WORLD WIDE」といったビックパーティーに出演。ハウス・ダンスシーンにおいては誰もが「NO.1」と認める存在であろう。

まず、人を楽しませるには、自分が楽しまなきゃいけない。

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音源提供やDJで活動してきて、初のMIX CD発売ということで、日頃DABDABなどでお世話になっているDJ KAZ君に今回はいろいろ聞かせてもらいたいと思います。まず、今回はどういうオーダーで始まったの?

DJ KAZ

とにかく好きにやってくれって言われて、好きにやった (笑) 。イメージは"ライブ"。だから、一発録りでやったんだけど、そこにはすごくこだわったよ。相変わらずアナログ (笑) 。はじめから、この曲とこの曲入れてっていうのは考えないで、一曲目をおいて、「よーい、ドン。」ってはじめた。だから、もう一回撮り直したら、違う曲が入ってた可能性もあるね。

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曲を選ぶ時、次の展開をどう決めていくの?

DJ KAZ

DJ KAZUクラブの時と家でやる時とでは別だけど、自分の中で興奮してくる感じを大事にしてる。今回の"FOOT LOOSE VOL.1"も、一曲目からのイメージがどんどん膨らんでいって、 ガーっ!て興奮していくような、そういう感じのMIX CDにしたかった。特に、クラブでやってる時と同じようにする意識はなかったんだけれども、このCDを聞いてくれた人が、クラブで聞いた時でも、温度差を感じないような、そういう意味でも"ライブ"感を大事にしたかったね。

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そもそも、どういうルーツでDJに?

DJ KAZ

もともとダンスをやっていたっていうのもあるんだけど、今でも最強に影響を受けてるのは、やっぱりマイケル・ジャクソン (Michael Jackson) 。小学校1年生くらいの時に、友達の姉ちゃんの友達が持ってたテープを聴いて、「これは何だ!?」と。そして、『スリラー』のビデオを見て、また「これは何だ!?」と。はまっちゃうと一気にはまるタイプだから、コンサートも2回行って、踊りも全部覚えたね。小学校の時に、一発芸大会みたいなのがあって、マイケル・ジャクソンの格好して、ムーンウォークだけをしたこともあった (笑) 。とにかく彼から、ダンスにはまっていって、決定的だったのは、「ダンス甲子園」。でも、音楽に関しては、やっぱりマイケル・ジャクソンの存在が大きいかな。今でも本から何からいろいろ集めてるし、そこから掘り下げて、ジャクソン5 (Jackson 5) も好きになった。

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DJとして10年近く活動してるよね。その間、自分の中で変わらないものや変わったことってある?

DJ KAZ

変わらないことは、まず、人を楽しませるには、自分が楽しまなきゃいけないっていうことが絶対的にある。お客さん中心のプレイが、自分はあまり好きではなくて。あとは、みんなが聞いたことがない曲をかけたいっていう気持ちはある。でも、それにはリスクもあって、お客さんが離れる可能性もあるんだけど、「いつもよくわかんない曲かけてるけど、何だろう?」って興味を持ってもらえるところをうまく混ぜる。そこは、変わらないかな。あと、CDをエディットして、自分しか持ってない音をアピールしたり。エディットするのは、「この音あったらいいな」「この音が来たらやばい!」「この曲とこの曲を合わせたらどうなるんだろう?みんな踊るんだろうか?」っていう、自分の頭の中で想像を膨らませて、興奮した状態でやるのが一番好き (笑) 。

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ダンスをやってたからこそ、人を踊らせる曲をわかってると思うんだけど、KAZ君が踊らされる曲ってある?

DJ KAZ

これがかかると踊る、っていうか、逆に動けなくなるのが、E.S.Pの『It’s you』 (アルバム『The Kings of House』 / Masters at Work DISK 1などに収録) が俺の中では最強。まさに、ダンスミュージックとはあれかな。やっぱり、あの時代のハウスが大好きだから。『It’s you』はどうしても自分でカバーしたくて、したんだけど、「どうしてこれなの?」って結構聞かれたなぁ。でも、俺の中ではあれが一番好きで、これしかなかったんだよね。

ダンスのショウタイムの音編集も、ずっとやってるけど、そこでやっぱり勉強になることも多い。今のダンサーの子たちはここの音は抜いてほしいんだ、こういうところが好きなんだ、とかそのタイミングっていうのが、毎日のようにいろんな人の編集でやってるから、わかってきて、それを自分の曲作りの中に活かそうと思った。例えば、“ワン・ツー・スリー・フォー”で抜くのではなく、“スリー”のハーフで抜いたらかっこいいパターンもある。そういうのは、ダンサーの人たちから自然に教えてもらった。1ヵ月に音編集が30チームを超えた時があって、1日に4チームとかが、あの狭い家でやってたね。入りきらないの、人が (笑) 。でも、すごく勉強になったよ。

あとはもう、ひたすら踊りながら音を作る。もう、汗だく。座って作るなんてことは、ほとんどない。一回、流しっぱなしで踊ってみて、踊りながら「あ、ここはいらないな。」って決めたりするね。

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音を作る時は具体的にはどうやって作るの?

DJ KAZ

DJ KAZUまずはドラムを作る。あとは、ネタとかサンプリングをストックしてあるから、そこからのインスピレーションで作ることもある。昔PINO君の音を3パターンくらい作ったことがあって、結構大変だった気がする (笑) 。機材の前で、適当に叩いてもらって、ドラムの音は「こんな感じがいい」って言われた音に、俺が肉付けしていったりとか、「それだったら、こうしたほうがいいんじゃないですか」っていう、足し算・引き算だね。それで、PINO君がパーカッションの音にはまっちゃって、ポコポコ叩きだしたら、止まんなくなっちゃって、「だったらそれでいきましょう!」ってそのまま録った。だから、あの音源はほぼサンプリングなし (笑) 。ほとんど一から自分たちで作ったから、できた時はちょっと感動したね。

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昔のダンスシーンと今のダンスシーンをKAZ君からはどういう風に見える?

DJ KAZ

クラブで回してるDJっていう立場から、ブースから見てると、元気はあるんだけど、長く踊ってる人が少なくなってきたかな。踊りだしたら、もうフロアから出ないで汗だくになるっていうイメージがあったんだけど、それが今はあまりなくなってきたかも。でも、今は情報があるから、音楽はすごく知ってるな、とは感じる。でも、昔からかっこいいって思う人は、今でも顔をくしゃくしゃにして踊ってるよ。あとは、全体的に若い子も少なくなったのかもね。パーティーのフライヤーを見せると、「ショウはあるんですか?」って聞かれることも多い。あとは、ひとりでクラブに来る人が減ったような気がする。間口が広がった分、薄まったのかな。ハウスダンサーは増えたようなイメージあるけど、クラブダンサーが増えたイメージがあまりしないというか。結構リアルなハウスのパーティーに、リアルなハウスダンサーが来ていなかったりすると思う。

タイトル通り、いろんな人の耳に飛んでいってほしい。

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タイトル“FOOT LOOSE VOL.1”の由来は?

DJ KAZ

"束縛されずに、好きなところに飛んでいける"っていう意味合いが込めてあって、辞書引きながら決めた。あとは、"ルーズな足"に"踊る"って意味もかけてて、だから今回のジャケットは4人のダンサーの足なんだよね。あえて顔は入れずに、足だけで「誰なんだろう?」っていう面白みを入れてみました。ちなみに言っちゃうと、KOJIさんとWaDooとDJ SACHIOの奥さんです (笑) 。とにかく、すごく"足"にこだわった。特にKOJIさんは、さっきのクラブダンサーの話をしたけど、そのお手本になる存在の人。最初に「足のジャケットを撮ろう。」ってなった時、すぐに「じゃ、KOJIさんにお願いしたい。」って決まったんだよね。でも、中身を見ても、顔はわからないようになってるから、すごく贅沢な仕上がりになったと思う。
DJ KAZU

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たぶん、ダンサーがDJを極めた先駆けはDJ WATARAIさんやDJ KEN-BOさんになると思うんだけど、その次世代の位置づけで、斬新さと、荒さと、新しい音への嗅覚の良さにはKAZ君や、DJ SACHIOっていう存在があると思っていて、SACHIOはアッパーなサンバや、クラシックを彼らしいフィールドでやる。KAZ君は、もっとトライバルな、感情に触れるような、あえて王道じゃないものを、王道にするエネルギーみたいなものがすごくある。二人はこれからもきっと突き抜けていくと思うし、我々としては、最近のDABDABDUBでもお世話になっているツートップです (笑) 。

DJ KAZ

ありがとうございます。ちなみにこのジャケットを作ったのはSACHIOだよ。あと、ひとつだけ俺の足もあります (笑) 。

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CDも聞かせてもらったけど、ダンスやヒップホップの影響も受けたってこともあって、他のハウスDJにはないかっこよさがあるよね。どんな人たちに聞いてもらいたい?

DJ KAZ

DJ KAZUダンサーはもちろんなんだけど、特にハウスっていうジャンルじゃない人かな。「ハウスってよくわからない。」っていう食わず嫌いな人もいるだろうし、いろんなジャンルの人に聞いてもらいたいっていうのは大きいかな。タイトルの"FOOT LOOSE"って付けたとおり、いろんな人の耳に飛んでいってほしい。場所はもちろん家でもいいし、おすすめなのは車の中だと最高だと思う。かっこいい曲をクラブに行く前とかに聞くと、すでに気持ちができあがった状態になれるし、そういうために使ってもらえると嬉しいね。

自分が中間に立って、橋渡しになりたい。
それをやらなくちゃいけないんだろうなって思う。 

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制作の中で、大変だったこととかあった?

DJ KAZ

ぱっと思いつくような大変だったことは、特にないかな。あ、でも入れたい声があって、その質感のために何時間もいじったね。もっとアナログっぽくしようとか、かすれた感じにしようとか。でも、それは楽しかったけどね。基本的には、かなりスムーズにいったと思うよ。

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最後のトラック14だけ、それまではつないだ流れから、直前を切って、浮いた感じになってるけど、思い入れのある曲なの?

DJ KAZ

もともと大好きな曲ではあるんだけれども、昔、趣味でMIX CDを作って、友達にあげたりしてた時に、必ず最後の最後にああいうオチにするのが好きで、逆にああいう風にしないと終われないっていう感じだった。でも、最初から入れようって決めてたわけじゃなくて、俺の中でやってく内に、流れで、「あ、最後は絶対これしかない。」って決まった曲なんだよね。14曲目はボーナストラック的な感じで、何が来るのか楽しみに聞いてもらえると嬉しいです。

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トラック1は人の声だよね。アメリカの漫才とか?

DJ KAZ

トラック1は、お笑いの演説のレコードの一部分からスタートさせてみた。俺、英語はよくわかんないんだけど (笑) 。でも、これで始まるのはかっこいいなって思ってた。実は、もう少し早く次にいくつもりだったんだけど、結構聞いちゃって、「あ、やばい!…まいっか。」って思ったよ (笑) 。

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(笑) 。でも、KAZ君らしいね。そういう生き方がDJスタイルにも出てるし、ダンスシーンやいろんな人に影響を与えてると思う。

DJ KAZ

ダンスシーンとは互いに影響を与え合ってると思う。こっちは音の提供であったり、逆に踊ってるのを見ててインスピレーションをもらうこともある。ちょっとまだダンスの世界とハウスのクラブの世界とではまだ距離があるかもしれないけれど、自分がその中間に立って、橋渡しになりたい。どっちにもいいところがあると思うし、うん、それをやらなくちゃいけないんだろうなって思う。でも、共通してるのは、音楽やダンスが好きだっていうこと。一般の人には「ダンスできないから。」って思ってる人もいるけど、そうじゃなくて、みんなで踊れて最高だなって思いたいし、そういうところでDJしたい。

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KAZ君は“キング”だと思うよ。まず、見た目からして (笑) 。髪の毛もいい味、出てるよ。生き物みたい (笑) 。何年物?

DJ KAZ

DJ KAZU17歳から切ってないね。でも、その間にいろいろアフロやったりしたけど、ドレッドになってからは19歳からかな。10年物だね。何の理由もないんだけどね。慣れると悪くもないし。だいぶ、すごくなってきてるけど (笑) 。

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そんなKAZ君のインタビューで2007年の締めくくりと2008年のスタートになります!まさに“FOOT LOOSE”な2008年にしたいね!

DJ KAZ

: いいねー!飛躍の年にしたいね。来年もよろしく!
'07/12/21 UPDATE
interview by AKIKO
photo by AKIKO & imu
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Date : 2007.11.14 RELEASE
No. : FL-001
Price : 1,575YEN (in tax)
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ハウス・ダンスシーンNo.1DJ KAZ (Project 301) の初MIX CDが待望のリリース!

キーボーディストNANASEとのユニット「Project 301」名義で、プロデュース / リミックス活動が高い評価を得ているDJ KAZの初のMIX CDが待望のリリース。ハウスミュージックを起点にディープ、テック、ジャジー、ブレイクビーツ等、彼ならではのジャンルレスでトリッキーなプレイが集約された今作は、ダンサーは勿論、ハウスリスナー、そしてダン スミュージックリスナー全ての人を魅了するであろう。


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