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カメラマン対談 薮内努×塩崎亨 〜踊人瞬撮者。〜
カメラマン対談 薮内努×塩崎亨 〜踊人瞬撮者。〜
11月6日(木) 渋谷club axxcisで行われるDABDABでは“クロスメディアオーディション”を開催。その「フォトグラファー部門」で審査員を務める2人のカメラマン、薮内努 (Crackers Studio) 氏、塩崎亨氏の対談をお届けする。

雑誌やフリーペーパーなどで、彼らの撮った写真を見ているダンサーは多いだろう。そして、今やダンサーの多くが宣材写真(いわゆるアー写) を持っているご時世、プロの技術と感性で形に残してくれるカメラマンの存在価値は、これからますます高まってくるに違いない。彼らに写真を撮って欲しい人はぜひオーディションに参加してみて欲しい。

当日、持参してもらった写真を見ながら、始まった今回の対談。あまり面識がなかったという2人だが、互いの撮り方・考え方に興味津々な和気あいあいムード。徐々に“カメラマン”というアーティスト像が浮き彫りになっていった。



YAB-CO薮内努 (Crackers Studio)

通称YAB-CO (ヤブコ) 。1980年、東京生まれ。2001年、株式会社クラッカースタジオに入社。約4年間にわたるアシスタント業を経て、現在カメラマンとして雑誌、広告業を中心に活動中。

とあるバンド写真にあこがれ、カメラを手にし、その後ダンサー・Chiiとの出会いをきっかけにダンス写真を撮り始める。また、この時期TDMに「写真を撮らせてください」と飛び込み、DABDABの撮影開始。以後、ストリートダンスに染まっていくヤブコの現場は深夜のクラブイベントが激増し、寝不足かつ不規則な毎日を送り始める。UMU凝llectionをきっかけにパフォーマーとしても活動。スクリーンを使ってのドキュメンタリーなバックステージやステージフォトのスライドショーもてがけ、イベントや発表会で表現活動も行っている。パフォーマーとしてカメラ片手にステージに上がると、テンションの上がった取材班と間違えられることがある(涙)。
http://www.cracker-studio.com


[雑誌] DANCE STYLE (株)リットーミュージック / STREET DANCE Magazine (株)JUST Be / DDD(株)フラックス・パブリッシング / 月刊EXILE(株)フラックス・パブリッシング / movement (株)ムーヴメントほか
[イベント] DABDAB / MAIN STREET / ZEAL STUDIOS発表会 / WORLD WIDE / DANCELIVE / @SUPER SOUL STREETほか
[その他] avex artist academy (aaa LIVE / Dance Master)




塩崎亨塩崎亨

1972年 東京生まれ。2006年 東京写真学園修了。2006年 ゲーム制作会社を退社。フリーに転進し、現在フォトグラファーとして活動中。

ダンスとの出会いは友人からの誘いで何気なく引き受けたダンスイベントの撮影。それが「DANCE@LIVE」であり、以後、関係者らに気に入られ、オフィシャルフォトグラファーとして現在に至る。そのほか、DANCE DELIGHT、JUSTE DEBOUTなど大きなイベント撮影も担当するに従って、ダンサーとの交流も深くなっていく。ダンサーに喜んでもらえることを最大の喜びとして、今日もシャッターを切り続ける。

[雑誌] DANCE STYLE (株)リットーミュージック / Street Dance Magazine (株)JUST Be など
[イベント] DANCE@LIVE / JAPAN DANCE DELIGHT / JUSTE DEBOUT 2008 など
[受賞] 第34回APA公募展2006 入選 / TGSフォトコンペティション2006グランプリ / 日本写真家ユニオン第2回公募展 優秀賞受賞
[個展] 2007年 GalleryCOSMOS「Reminiscences」 / 2008年 AzabuArtSalon「Once in a blue moon」



先回りしている脳みそと身体と指。

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今日は、お2人に写真を持っていただくようにお願いしたのですが、拝見させていただいてもよろしいですか?

撮影:塩崎亨
塩崎

これは3年くらい前のDANCE@LIVEファイナルで、僕が初めてダンスを撮ったときの写真です。ダンスとかを何も知らないときに撮った写真ですね。

撮影:塩崎亨
塩崎

そして、これは先日のJAPAN DANCE DELIGHTで優勝したGLASS HOPPER + PINOCCHIOです。今日は最初と最新の写真たちを見繕ってきました。久々に昔の写真を見ると、今は必死に表情とか動きに合わせて撮ってるんですが、逆にダンスを何もわからずに撮ってた昔の方が、面白く撮れてるなって感じますね。誰だかわからないし、みたいな (笑) 。

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でも、最新の写真は、「ッハ!」っていう一瞬を捕らえてますよね。

塩崎

こうなってからシャッターを切ったんじゃ遅いんですよね。もう先回りをしている脳みそというか、この飛んだ頂点に行くときのこちらの心構えというか・・・例えばこの写真、

撮影:塩崎亨

塩崎

ロッキンで絶対出てくる技ですが、彼らが出ているときは、必ずこのビシッと来る瞬間が来る!っていう脳みそと身体と指になっています。

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もともと塩崎さんがダンスを撮り始めたきっかけは?

塩崎

1枚目のDANCE@LIVEファイナルがダンスを撮った最初なんです。当時、会社員をやりながら写真の学校に通っていまして、クラスメートの子から、「こういう仕事あるけど、どう?」と紹介されたんです。それで、その時の写真を、主催者のカリスマカンタロー君が気に入ってくれてから、ずっとオフィシャルで入らせてもらっています。それからは、別の雑誌編集者の方も紹介してもらって、DANCE@LIVE以外の写真をそのつながりで撮ったりしています。

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では、次はヤブちゃんの写真を見ていきましょうか。

THE YAB-COLLECTION.


撮影:薮内努

YAB-CO

これはダンススタイルの取材で、大阪で撮ったD’OAMのKATOさんです。

撮影:薮内努

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これはZEALの発表会だね。

塩崎

よく光も全部に当たってるし、みんなの顔が見えていて、すごい。

YAB-CO

これはすごく気に入ってます。あとで、本人たちが「あ、私いるじゃん!」って自分を見つけられるようにしたかったんです。照明さんには、できるだけ明るくしてくださいってお願いしました。

撮影:薮内努

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ヤブちゃんのこういう観点、好きだなぁ (笑) 。

YAB-CO

後ろには関係者の方々がズラーっといるんですけど、「どうも、一番良い席で申し訳ないです」って (笑) 。


塩崎

あ、これ、かっこいい。

YAB-CO

これ、塩崎さんが最初にダンスを撮ったといっていた、2006年のDANCE@LIVEファイナルですよ。だから、同じ現場にいたんですよね。

撮影:薮内努

YAB-CO

2007年のDANCE@LIVE。COREでの予選ですね。

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これはバトルが終わった後?

YAB-CO

いや、これは始まる前ですね。

塩崎

一瞬の頭の下げる角度の違いで、関係性が出てますね。


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PINO君ですね。

YAB-CO

本人に送ってあげたら、「ヤバイ!」って喜んでくれました (笑) 。

ダンスの“見せどころ”を撮る。


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動きが読めないダンスという被写体を撮る点で、何か意識していることはある?

YAB-CO

ん〜・・・僕は“感”とか、なんとなくそこにいる位置とかにも寄るので、“運”なのかなとも思います。あとは、撮りながらでも、ダンスを見て、「わー!すげー!」ってテンションが上がると、自然と「あそこからも撮ってみたい!」って自分で動きに行くんですよ。例えば、ポップを正面で撮ってもつまんないから、こういう角度で見たら撮りやすいんじゃないかなっていう感覚にもなりますね。

つまりは、経験も必要だったりするかもしれないですね。やっぱり見慣れてこないと、踊りのどこがすごいのかとか、“見せどころ”みたいなものがわからないので。

TDM

へぇ。ジャンルによって“見せどころ”ってあるんだ。

YAB-CO

僕の中で、ハウスは体を反応させるようなダンスなので、そのスピード感だったりを、逆にパシッと止めてみたりとか、ものすごくぶらして撮ってみようって考えたりしますね。ジャズだと、シルエットとか。僕、よくやるんですけど、ライトに人をかぶせて撮るんですよ。だから、照明の位置は必ず現場で確認しますね。

塩崎

照明の位置は確かに大事ですね。僕も気にします。少しの角度によって、ものすごく変わりますし。画の中にライトが入るか、入らないかで大きく違ってきますよね。

YAB-CO

その、ファインダーを覗きながらの、「あ、もうちょっとこっちか!?」ってキュッとした動きが、踊りとうまく反応できるかどうかをすごく意識してますね。シルエットで見せたいからここにライトをかぶせようとか、ここに持ってきたら、こう見えるだろうっていう頭の中での画作りはします。踊っている人や、在る物を単純に撮るんじゃなくて、“どう見せたいか”を意識してます。

憧れのカメラマンの存在。


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では、ヤブちゃんがそもそも写真を撮るきっかけは何だったの?

YAB-CO

僕は、専門学校に通ってて、そこの教科の中で写真があったんです。もともと絵が得意だったので、CGとか、デザインとか、そういうのをやりたいなーと思ってたら、卒業するギリギリにやりたかったことが決められなくて、消去法で写真だったんですよ。

当時いろいろ雑誌を読んでいて、自分もバンドも組んでいたんですが、好きなバンドがカッコよく載っている雑誌があって、「あ!バンドのオフィシャルカメラマンになって全国ツアー回ったら、おいしいものも食べれて、バンドのライブも見れて、一石二鳥じゃん!」って思って (笑) 。なので、最初はバンドのライブをメインに撮っていました。

塩崎

ライブってダンスと通じる部分がありますね。

YAB-CO

そうなんです。僕はダンスを撮りに行く前に、必ずライブの写真を見てから行くんです。自分が撮ったものじゃなくて、好きなライブを撮るカメラマンがいて、その人の写真なんですけど。

その人って、ステージの空間だったり、アーティストの雰囲気を切り取るのがすごくうまいんです。そのバンドの写真は、その人じゃないと絶対に撮れない。別にマネしようとか、何かを盗むためではなくて、良いビジョンを自分に入れてから撮りに行くんです。

TDM

ダンスも良い手本を見て、そこに自分の個性を入れていく作業だし同じだね。

YAB-CO

あと、その憧れてるカメラマンが僕と同い年だったんです。なのに、ものすごい数のバンドやライブを撮ってて。一時期、会社を辞めてその人に付こうかなって思ったこともありました。でも、同い年って聞いて、「なにくそ!」って思ったんですよね。それで、「絶対プロになってやる!」って決めたんですよ。

その人はずっと若いうちから、僕がそのバンドのライブを観に行っているときにも、仕事で撮影をしてたんですよ。憧れ、プラス、ちょっと悔しい、みたいな (笑) 。アシスタント時代も、あれから何年か経ってるのにまだ自分はアシスタントをやってるって思ってて・・・それで、絶対カメラマンになってやろうって思ったんです。

塩崎

僕はもともと会社員で、ゲーム関係のグラフィックデザイナーをやっていました。写真は、ずっと見たりするのは好きで、やっぱり僕も好きな日本人の方がいまして。海外の文化やドキュメンタリー写真を撮る方なんですが、その方が新宿で展示をやっているのを見にいったときに、自分にスイッチが入りましたね。「どうにかして会社を抜け出て、写真で何とかやっていこう!」と思いました。その写真家の方はネパールや中国を中心に世界中撮っている方なので、ライブやダンスとは関係ないんですけどね。

カメラマンとしての生き方。幸せな環境。

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ダンスシーンは理想とする仕事のスタンスが社会的に確立しにくくて、趣味として割り切られる傾向に陥りがちと感じるけど、カメラのシーンはどうですか?

塩崎

僕はあまりダンスについて詳しくないんですが、職業としてはカメラマンよりは潰しがなかなか利かないように思います。写真やカメラを使ってお金を得るという仕組みは、日本ではそんなに閉鎖的ではない。職業としても市場があるので、一生懸命やってさえいれば、その頑張り次第でやっていける。ダンサーとしての仕事よりはお金の計算がしやすくて、半永久的にあるものだと思います。

TDM

最近は、紙の高騰や本離れなどで、雑誌が減ってきているそうですが、その影響は?

YAB-CO

僕はレギュラーの雑誌が一つなくなっちゃったので、もろにその影響をくらいましたね。確実に雑誌は減ってきているし、今はウェブで情報がまかなえちゃう。お金出すより、ネットでカチッとクリックするほうが、ラクチン。いつの間にか情報入手のベースになっていて、紙の価値観が変わってきていますね。

塩崎

とはいいつつも、カメラマンにとって日本はまだ幸せな環境だと思います。雑誌はコンビニで買えて、廃刊などあるにしろ、世界的に見ても、これだけ雑誌がある国はそんなにないと思います。あとは、世界中のプロカメラマンがキャノンかニコンのカメラを使っているので、日本製っていうことも幸せなことですね。何かあっても、東京ならどこでもすぐにケアできますし。市場としてきつくなっているとはいえ、自分の環境は幸せですね。

被写体とのセッション。


TDM

カメラマンとして一番大事にしている意識はありますか?

塩崎

被写体が、景色や物などではない場合、ダンスやインタビューなどで人が絡んできます。僕は“撮らせてもらっている”ので、“撮ってあげている”と思わせたり、相手にイヤな想いをさせないようにしようとは意識していますね。例えば、仲良くなれば別ですけど、ダンサーの方は、ほとんど僕より年下ですが、基本的には社会人としての対応をするようにしています。

YAB-CO

モデルやタレントは、当然かわいいし、カッコいい。もちろん、ダンサーも、すごくて、キレイでかっこいい。だけど、単純に誰が撮ってもかわいく・カッコ良く撮れるんだったら、なんだか“撮らされてる感”があるかなと。そうじゃなくて、自分は少なくとも「いや、自分はこう撮るぜ!」っていう感覚を持っていて、特に対象が人の場合は、「もっとこうしてみて。」って指示出しもします。

僕が見て、良いと思う角度や表情をしてもらう為のコミュニケーションを取るというか、そういう現場の作り方をすごく意識しますね。“撮らせてあげる”、“撮ってもらう”っていう関係を作り合うのではなくて、こう、セッションというか。そういう相手との距離感をできるだけ縮めて撮りたいっていうのはあります。

写真にはそういう部分が現れると思うんです。特に人の表情に。本当に笑顔を撮りたいときに、現場の短い時間の中で、どれだけの距離を縮めた上での笑顔を撮れるのか。そういう部分はすごく心がけています。やっぱり、意識しないと、“撮らされてる感”のほうが多くなりがちなので。あとは、そういう現場の雰囲気が、写真から見てもわかるように空気を出したいなとも思いますね。

前にJuNGLEさんを撮影することになって、絶対撮りたい画があったので事前に、「黒いドレスを用意してもらってください。」ってお願いしたんです。

ダンスも、モデルもタレントも商品も、全部同じというか、カメラマンとしては同じ目線で見ているかな。結局、被写体=撮る対象になる物の環境ではなくて、撮るこっち=カメラマンの環境のほうが問題というか大事だと思っているので。こちらの挑み方というか。そういうのは、どれに対しても一緒ですね。

カメラとダンスの共通点。


YAB-CO

でも、ダンスって、結構ほかのものと似てる部分もあるじゃないですか。“ダンスにしかない”っていう要素よりも、何にでもいえる要素がぎっしり詰まってると僕は思うんですよ。だからこそ、追求していく価値があるというか、追及したいと思うんですよね。ダンスを撮ってて、無駄なことはないし、逆にダンサーから学んだことのほうが多かったりもするので。

ダンサーって、すごく自分をアピールする表現というか、“見せる欲”みたいなのが、すごいなって思います。あんな大きなステージの上に立って、からだ一つで、「自分はこうだー!」って見せて、それをお客さんにはお金を払って見に来てもらう・・・僕らカメラマンもたぶん一緒なんですよ。それが、ステージではないだけで、紙の上だったりウェブの上で、僕らも「自分はこうなんです。」ってカメラを通してやっている。だから、ダンスとカメラって似てるなってすごく思うんです。ダンサーがやってきたこととか、やりたいこととか、今思っていることを、写真に置き換えてもわかるっていうことがすごくあるんです。

塩崎

わかります。ある意味、ダンスを撮って、媒体に載せるための写真は、いわゆるバックダンサー的なもので、その時の役割は裏方の仕事にあたると思います。それに対して、映像でスライドショーに映し出したり、展示したりする為の写真たちは、いわゆる主役。自分の撮りたい写真ですよね。そういう意味で、ダンサーも後ろにいたり、前にいたりするのと似ているかなと思います。

YAB-CO

ホントに。僕らはある意味、一つ時間を置いてからこういう表現の形になるけど、ダンサーは生身の自分のからだを、ライブでお客さんの前でさらすわけじゃないですか。それってすごいなって思います。

良く撮れるダンサー。


TDM

なるほど。そんなお2人に、今回のDABDABで審査員をお願いさせてもらいました。まず、主旨説明をすると、これまでお2人が撮られてきたバトルやコンテストなど、ダンスの可能性を試すコンテンツはいろいろありますが、オーディションもダンサーの為の場であり、もっとダンスを表現する場として広くあって良いものだと思って、企画しました。

ダンサーの可能性というのは、例えば、世界の旅番組のナビゲーターが、俳優ではなくてダンサーでも良いと思うんです。テレビじゃなくても、ファッション雑誌にもっと幅広くダンサーがモデルで起用されていても良いなと。ダンサーというアイデンティティーで生きる人、ビジュアルという表現から輝く被写体、それが「ダンサーだから良いね、さらに良くなるね」って言われるような存在に発展するとおもしろいと思い、お2人の視点でそういう方が選んでいただければと思います。

もちろんダンスのスキルがあることは前提なんですが、たとえバトルで優勝しなくても、そういう別の才能でみんなでダンスシーンを楽しんでいける。さらに、ダンスイベントとメディアがコラボし、ダンサーがそのイベントに華を添えることで、メディアを通して、ダンサーの存在を伝えられる。

役割はモデルでもナビゲーターでも何でも良いんですが、そういう可能性をいろいろ増やしていければと思い、その第一弾として、普段その可能性を写真に収めているお2人に、被写体として選んでいただきたいと思ってオファーさせていただきました。

塩崎

この企画はダンサーにとってもいいことですね。

TDM

ほかの審査員の方にもお伝えしていますが、ピンとこなければ選ばなくても大丈夫です。“良いものは良い”と評価したいので、誰か選ばなければいけないというわけではないです。

ただし、選ばなくても、ちゃんと思ったままのことを彼らに伝えてあげてください。たとえ賞につながらなくても、そのメッセージを伝えてあげるだけで、新しい観点を持てるようになるかもしれない、そういう意味も含めてオーディションに参加して欲しいと思っているので。

お二人から見て“撮りやすい”ダンサーっていたりするんですか?

塩崎

DANCE@LIVEでいうと、やっぱり、上位にいる人ほど撮りやすいですね。うまい人っていうより、音と合ってる人。音と合わせてシャッター切ってるだけで良い写真になっちゃう。

僕はジャンルや技とかもわからない・・・でも、逆にダンスがわからないなりの感覚でどこまでカメラマンとしてやっていけるか!?っていう感覚もどこかにあったりしますね。

YAB-CO

僕は、「自分はダンスを撮っていく!」って思ってからは、知らなきゃダメだと思って調べました。すると、ある程度撮ってるうちにピタッと行き詰ったんです。撮り飽きてるというか、本当のダンスの良さがわかっていなくて、全部方法論で撮っちゃってるなと。でも、僕はダンスを習っちゃダメだと思いました。僕は、あくまでカメラマンとして、客観的にダンスを見る目線で撮れば良いかなと。たぶん、ダンスの本質を知っちゃったら、撮るのが詰まんなくなるような気がするんです。

「ダンサーだから、こう撮って欲しいんだろうな」っていうイメージがわからないからこその、違った撮り方ができるし、さらに、それが良いって評価されたら、さらにおもしろい。だから、その目線はダンサーと同じじゃなくてもいいやって。

塩崎

そうですよね。僕も、あえてというか、ダンスを勉強しないようにしています。たまに質問したりしますけど、ダンスの世界を知らずに撮り続けちゃってます。でも、僕もこのまま行けば、薮内さんも勉強したように、なんならやっぱり踊ってみたいなとも思っているので、踊り始めちゃうかもしれない・・・。

TDM

ダンスの何がカッコいいと思いますか?

YAB-CO

いや、それは口ではいえないですね。それは、“なんとなく”で良いと思うんです。「なんかわかんないけど、カッコよかった。」っていう。写真も一緒だと思います。“良い・悪い”というよりは、“好き・嫌い”っていう感覚。だから、僕は人の写真を見て、「この写真、良いね。」っていう評価よりも、自分が好きか嫌いかっていう判断をするんです。

塩崎

僕もです。技術的な“うまい・下手”っていう評価はしない。

YAB-CO

もちろん、「うまいなぁ!」と「好きだなぁ!」が比例する人もいますし、スキル関係なく、その人の雰囲気が好きだなぁって思う人もいますし。例えば、KETZさん、PINOさん、U-GEさん、あと・・・・KITE君。

塩崎

KITE君はいつも笑ってますよね。全身で「楽しい!」って感じが出まくってる。

YAB-CO

それでいて、あの攻めの感じがすごい。

塩崎

あとはTATSUOさんも、かなり「楽しくてしょうがない!」って感じで踊りますよね。

YAB-CO

TATSUOさんもいい。かなり、いい。

塩崎

あとは、DANCE@LIVEで優勝したときのマドカもすごかった。どちらかというと、KITE君よりは派手な動きではないんですけど、でも、あの時は空気がすごくて、周りの人を動かせるものが出ていて、カッコいいなと思いました。

YAB-CO

人から“すごい”って言われてるダンサーは、単に踊りだけがすごいんじゃなくて、その人自身の人間性だとか、毎日の生活だったりとか、そういう生き方が人と違うというか、それを積み重ねてきてる人に結果がついて回ってるんだと思います。優勝する人はそれなりの理由がちゃんとあるからなんだろうなと。

優勝者のインタビューで聞くコメントも、それなりのことをいっているというか、常に考えているからこそ、取材の時にすぐに発言できるんでしょうね。なるほどなーと良く感じてます。

「ダンスの写真って言ったら、YAB-COだよね。」って言われたい。


TDM

では、それぞれ将来の展望をどう考えてますか?

塩崎

僕は、職業として、どこかで“自分も主役になりたい”と思っていて。仕事の写真は、クライアントがあって、誰かに頼まれた写真ですけど、そうではなくて、自分のサジ加減での、本当に自分の写真だけで生きていきたいというか・・・。ダンスでいえば、バックダンサーでのダンスではなくてという感じです。できれば、そんな風にしていきたい。

一般的にいえば“カメラマン”の仕事ですね。自分が主導で撮れる写真、それをお金に結びつける流れ。素材としてではなく、ギャラリーで展示をしたときに、絵として買っていってもらうとか。そういうことを自分は考えています。仕事をやらないというわけではないんですが、どこかでそことの接点をもっと縮めたいですね。まぁ、日本ではなかなか写真を買う人もいないので、売るのは大変なことなんですけど。

YAB-CO

つまり、物書きでいうと、ライターではなく作家の方向ですよね。フォトグラファーという肩書きではなく、作家的な志向で写真を撮る。それは、商業的な写真を撮るのとは、ものの見方が違ってきますよね。

僕は、とりあえず近いうちにちゃんと写真を1冊にまとめようと思ってます。それに値段を付けて、ちゃんと撮り貯めたものに価値をつけたい。僕はそれが1回可能になってから次のことを考えるかな・・・。

でも、僕は今塩崎さんのいったようなことを、実はあまりそうしたいと思ったことはないんです。あくまでそれは対象があってのものなんだけど・・・たとえば、写真を撮るのに何万円も出せる視点があるかもしれないし、でも、それはステージに関しては何も変わらないことだと思うので・・・。

確かにバック的な仕事なんだけど、でも、僕はこれでずっとやっていきたいですね。それで、「あの写真はあの人が撮ったんだよ」っていう残り方をすればいいかなって思います。“YAB-COさんはこの写真”ではなくて“この写真ってYAB-COさんが撮ったんだよね”って言われるようなステージ写真が撮れれば良いなって思います。もちろんブツ撮りとかビジネス的なこともちゃんとやりますけど、それとこれは平行していきたいと思ってます。ステージって、動画とは違った、写真だからこそ撮る意味というか価値があると思うので。

TDM

確かに、あんな一瞬や角度の画は、写真だからこそ気付けるダンスの魅力だよね。

カメラマンとしての生き方。幸せな環境。

TDM

この時、この瞬間に、自分がどう見ていたかが、これだけリアルな形になる。僕は今ステージでそれを撮れて、すごく嬉しいんです。僕は最初はバンドが対象でしたけど、とにかくステージを撮りたくて始めたので、今もステージのダンサーをとり続けてこれて、よかったなと思います。もちろん、バンドを撮っていたとしてもよかったと思うと思いますけど、これはダンスのステージを撮っていて見出せたことだから、続けていきたいですね。

僕の憧れてたカメラマンはバンド専属のカメラマンなんですよ。だから、僕も「ダンスの写真って言ったら、YAB-COだよね。」ってなれたらいいですね。それが、東京での今まで関わった人だけじゃなくて、その人の下にいる子たちも、その人と同じ立場になったときに、そういう認知の仕方をしてもらえるようなカメラマンになれたらいいですね。

TDM

写真に対する姿勢でこんな風にお2人の違いがあるのは逆におもしろいですね。

YAB-CO

僕も絶対そう思います。僕とは違った、塩崎さんのダンスの距離と、その距離だからこそ撮れる写真がものすごい好きです。

塩崎

僕もこんなに気軽に話せてよかったです。現場がかぶるとしても、去年から数えてまだ数回くらいしか会っていなかったので。でも、すごくやりやすい方でよかったです。

TDM

実は、今回の話もカメラマン同士だから、どうなのかな?って思いましたが、素敵な写真とセッションをありがとうございました!DABDABもよろしくお願いします!
'08/10/24 UPDATE
photo by AKIKO & imu
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