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ブロードウェイ・ミュージカル「ブリング・イット・オン」公演特集
羽柴多賀子 〜 エールの先導者たち。 〜
ブロードウェイ・ミュージカル「ブリング・イット・オン」公演特集 羽柴多賀子 〜 エールの先導者たち。 〜
現在、上演中のブロードウェイ・ミュージカル「ブリング・イット・オン」はチアリーディングで展開する舞台。キャストは全米でトップクラスのチアリーディング選手たちと全米のミュージカル界の精鋭たち。大人数でのシンクロ性、高さを活かした立体感、難易度の高い技を体ひとつで素早く決める身体能力、そして笑顔と声・・・今や競技として認められたチアには、ジャズ・ヒップホップの部門も設けられているがダンスとはまた違った独自の観点を持っていると、チアの普及に務める羽柴さんは語ってくれた。観劇をより楽しむためにチアの魅力について触れてみよう!

羽柴多賀子●羽柴多賀子

高校時代バトン部で活動後、チアリーディングの世界に足を踏み入れ、指導者として活躍。米国で学び、1988 年、アメリカのチア育成・指導団体United Spirit Associationの日本支部として、USAジャパンの設立に参加。現在は代表を務め、後進の育成とチア普及に尽力している。

ブロードウェイ・ミュージカル「ブリング・イット・オン」公演特集 羽柴多賀子 〜 エールの先導者たち。 〜

チアリーダーに演技中にアイコンタクトをされた衝撃。

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「ブリング・イット・オン」はチアの舞台ということで、ストリートダンサーに向けて紹介しつつ、私自身もチアのことを学べたらと思っています。まず、羽柴さんの現在の活動を教えてください。

羽柴

アメリカにたくさんある協会の中で、ユナイテッドスピリットアソシエーション、略してUSAという、西海岸を中心に活動している協会の日本支部として、25年ほど前にはじまったのですが、それを受け継いで、そこの理念を持った上で、日本にチアを普及する仕事をさせていただいております。

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もともとチアをされていたんですか?

羽柴

羽柴私は高校からバトンをやっていました。昔はバトンを持っている人たちがポンポンを持って演技していたのです。もちろん今でも高校野球とかではバトン部が応援するところもありますけど、バトンもチア同様、世界的に競技として発展してきましたね。だから、昔のように「クルクル回して楽しい!」というのは、割と競技からは離れた活動とされている感じはあります。

ですので、“チアはこうあるべき・バトンはこうあるべき”という風に両者はどんどん分かれてきました。でも、全国ではチアバトン部としても存在しますし、その辺は自由でいいと思います。

それこそ私はチアバトン部でしたね。バトン部だけど、野球部の応援ではすずらんテープを割いて手作りポンポンを振ってました(笑)。

卒業後、バトンを教えるようになったときに、教える学校側からチアをやりたいという声がありました。ちょうど日本にチアが入って来た時だったので、「じゃ、勉強してみようかな」と思い、数年後にアメリカに行く機会があって、向こうでUSAの講習会を1ヶ月ほど受けたんです。そこで、「いやー、これっておもしろい!」となりましたね。

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羽柴さんにとってチアはどういう魅力だったんですか?

羽柴

表現できると言いますか・・・。バトンってテンションを上げすぎると、落っこちちゃうので、すごく冷静にいなきゃいけない。思いっきり!ができないんです。バレエとも通ずると思うんですが、割と技をたんたんと自分で磨くスポーツなんですね。

それに対してとにかく見せる、外に発散型のチア。アメリカで演技中にチアリーダーが私にアイコンタクトをして来たんです。それにびっくりしたけど新鮮で、魅力を感じて「私、これやりたい!インストラクターをやりたい!」と思いました。

チアの仕組み。


羽柴

ストリートダンスと、晴天の芝生の上で踊るチアは遠いような気もしますけど、確かに、最近はいろんな方々がチアに対して理解をしていただけるように感じます。チアというものが異物ではなくて、普通にひとつのスポーツとして世に認識されてきたのかなと思うところもあります。

ストリートダンスももともと戦うための発祥であったり、音楽から派生したり、歴史やソウルや、そういうところからだったものが、ちょっとずつ一般大衆に受け入れられるものになってきたじゃないですか。だから、ストリートもチアもダンスのジャンルとして、「それもありじゃん!」と歩み寄ってきたのかもしれないですね。

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そもそもの仕組みをお聞きしたいのですが、チアのくくりはチアリーディングでよろしいんでしょうか?

羽柴

羽柴応援する人をチアリーダー、応援することをチアリーディングと言うことが、もともとの発祥だと思うんですが、そこから少し競技思考になり、競技大会が行われるようになっていきます。

もともとのチアリーディングの中でも役割分担があり、掛け声をかけて応援を誘発する人たちだったり、「僕たちこんなにエキサイティングしているよ!」とジャンプや体操技を見せたり、2階のスタンド席にも掛け声が届くようにするために、スタンツという人の上に人が立つ組み体操をやり始めた。それらが、だんだん難しい乗せ方に進化していきますが、そういうことをやる人たちが、応援団をやる中でも、チアリーディングと呼ばれるようになりました。

ちなみに掛け声をかける人たちはクラウドリーダーとか呼ばれますね。彼らを含めて、応援をリードすることをチアリーディングと言います。

あとは、曲の時にポンポンを持って踊る人たちは、だんだん進化してきて、チアのダンスというくくりになってきましたね。チアダンスという言葉はアメリカにはないので、言い切れないんですけど・・・日本ではチアダンスとも呼ばれています。

チアリーディングとダンス、チアにはこのふたつの役割分担がされてきました。応援団もチアリーディングと言われます。まとめてチアと言ってもらっていいと思います。

今回の舞台「ブリング・イット・オン」はチアリーディングの人たちですね。組体操、体操技、掛け声が入っています。組体操はピラミッドや少人数で組むものも含め、いわゆるスタンツと呼ばれるものです。

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なるほど。ソングリーディングという言葉も聞いたことがあるのですが、それはまた別でしょうか?

羽柴

先ほどチアをダンスとチアリーディングで分けたんですが、ポンポンを持ったダンスはもともとソングリーディングと呼ばれていました。

昔、音響設備がなかった時代、応援歌やファイトソングなどをみんなで歌う時に、一緒に歌いながらやっていたんです。だから、もともとは踊る人たちがソングリーディングで、チアリーディングと役割分担で分かれていたということです。

そこからダンスの中身が濃くなっていきます。ヒップホップが得意、ポンポンが得意な人、ジャズが得意な人に分かれてきました。ハーフタイムやタイムアウトといったブレイクの時間に、昔だったら主にポンポンを持って踊っていましたが、今はそこにヒップホップのダンスが入ったりしています。ですので、ソングリーディングとは呼ばずダンスチームと呼ぶところもあります。

競技になったチア。


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なるほど。チアの世界大会はどこで行われているんですか?

羽柴

アメリカです。フロリダのディズニーワールドの中です。

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ワオ!夢がありますねぇ。 ディズニーでチアの大会ができるなんて知りませんでした。

羽柴

ディズニーワールドの中にスポーツアリーナがあるんです。スポーツ施設がたくさんあるエリアがあって、観客席の大きい野球場もあれば、サッカー場もテニスコートもゴルフ場もあります。その中にスポーツアリーナが今ふたつあるんですが、そこを使ってチアの大会を行っていますが、すぐ横でサッカーの大会をやっていたりもしますよ。

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チアの世界大会にはどれくらい集まるんですか?

羽柴

世界大会といっても、いろんな大会がありますが、一番格が高いものが、サッカーで言うワールドカップに当たる、各国から1チームしか出れない大会で、104カ国が加盟しています。

そこには部門があり、ダンスだとポンポンを持つPOM部門、ヒップホップ、ジャズの3つに分けられます。

音楽性やスタイルによるところが大きいですが、アメリカの市場でもヒップホップをジャンルとして外すわけにはいかないものなので。

ですから日本からは3チーム出場しました。アメリカでは、1チームで全部門をやっちゃいますけどね。 /td>

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それは最強チームですね〜。

羽柴

それだけチアのダンスのスキルや層が厚いんですよね。

そして、チアリーディング部門は女子だけ・男女混合部門があり、それぞれがレベルでふたつに分かれています。名前はプレミアとエリートと言いまして、プレミアのほうがレベルは上です。どちらかしか出れないので、チアが強い国は、プレミアに出て、まだこれからというチームはエリートに出ます。レベルの高いところに挑戦したい国はプレミアに。日本はプレミアに女子チームと男女混合チームが出場しました。

すべてにセフティールールがあり、やれる技・やってはいけない技がありますが。プレミアに比べエリートは、更にルールの上限があります。安全面を考慮して、高さや回転のある技は危ないので制限が設けられています。

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難度の制限があるんですね。

羽柴

そうですね。セーフティは大前提にあります。これはダンスとは違ったルールでしょうね。

もちろんそれぞれのレベルで男女混合か、女子だけに分かれ、一緒に審査はしません。

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クオリティが変わりますもんね。

羽柴

そうですね、人を持ち上げる土台が男か女かで違いは出てきます。

今回の「ブリング・イット・オン」は男の子が入ってるので、男女混合チームですね。アメリカでは男女混合も盛んに活動していますからね。

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今回、この作品に出演されるチアリーダーの方は、プレミアの男女混合優勝チームの方なんでしょうか?

羽柴

チームで「ブリング・イット・オン」に出演しているわけではなく、この作品のオーディションを受けて合格した人たちがミュージカルのキャストと一緒に作品に参加しています。 アメリカは一番チア人口が多く、協会が約200以上もあると言われています。日本だと4つくらいです。

アメリカはエリアが広いので、様々な協会ができてきたのですが、その中でも一番大きいのは、中央エリアを中心に、ほぼ全米をカバーしているUCAという協会で、そこの所属メンバーやインストラクター、そこの大会に出てチャンピオンをとったチームのメンバーが今回の「ブリング・イット・オン」は多いですね。

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平均年齢はどれくらいなんでしょうか?

羽柴

たぶん今回のメンバーは大学を卒業した人たちだと思います。大学生はこの時期に来れないと思うので。

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大学を卒業して、いわゆるプロとしての活動が、今回の舞台になるということですね。

羽柴

アメリカはすごく割り切る傾向があるので、大学を卒業したらスパッと辞める人が多いんです。協会のインストラクターには高校卒業する直前の17歳くらいからなれます。そこから、大学を卒業する6〜8年間くらいはインストラクターをしたりするんですが、就職したら、もう辞めるとか。あとは、学校の先生になって、サマーシーズンだけインストラクターを続ける人たちもいます。少し日本とは学生期間やカルチャーが違うんですけど、演者としてのプロはこういう活動しかないですね。

舞台で観るチアに注目。 


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今回の「ブリング・イット・オン」が来日するにあたって、この舞台にはどんな魅力があるんでしょうか?

羽柴

ブリング・イット・オンおそらくチアの舞台をご覧になるのは初めてだと思います。私も生で観るのは初めてです。なので、これは期待になりますが、おそらく生で行われるショーとしてのチアのおもしろさがあるんじゃないかなと思います。

あと、チアは縦と横と高さのある3Dなので、奥行きもありますし、前でスタンツを上げて、後ろからポーンと人が出てきたりする、それがとってもおもしろいと思います。ダンスだとリフトの高さに限界がありますが、チアは一瞬で上がって、一瞬で下りるし、一瞬で組み替えられる、それがほかのダンスにはない要素だと思いますし、そこも魅力です。

そして、やはり、見せ方がチアなのでエネルギーが前に前に出て来ると思いますよ(笑)。そこにストーリーも加わることで、私自体もそこにどのようにチア演技が構成されるのか、非常に興味がありますね。

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キャストのプロフィールを見ると、体操選手をバックボーンに持つ人が多いですね。

羽柴

アメリカは体操がとても盛んです。ジムもたくさんありますし、子供の時から体操をやる子も多いので、高校で体操得意だからチアに入る子もいますね。体操技ができたほうが、体幹が強く持ち上げるにも持ち上げられるにも好都合ですね。

あとは、ミュージカルになっていることで、それらの要素がどうブレンドされているのか楽しみですね。原作の映画は見ましたけど、そこまで臨場感はないですけど、アメリカのカルチャーがわかっておもしろかったですね。

チア的役割分担。


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先ほどおっしゃっていた世界大会の規模はどれくらいのものなんでしょうか?

羽柴

規模的には、国の代表チームが70カ国出ています、年々規模が大きくなり益々ステータスも上がってきています。

ほかに、クラブチームの世界選手権というのもありまして、合わせると相当数が出てますね。世界大会とクラブチーム世界大会を合わせて5日間ずっと大会が行われています。大学を卒業してからクラブチームに入り直して、もっと競技を続けて行く人もいるんだと思います。

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辞める方もいれば、クラブチームに入る人もいる、と。

羽柴

そうですね。クラブチームでもインストラクターや振付師、曲を作ることも職業のひとつにもなってます。

アメリカでは、振付も曲も買うものというビジネスが成り立ってるんですね。フィギュアスケートと同じですね。「あの人から買いたい!」「今シーズンは誰から買う?」という感覚です。

コーチは別にいます。だから、役割ですね。振りを作ってくれる人と、それをブラッシュアップしてくれる人。

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日本でもそういうビジネスはあるんですか?

羽柴

アメリカほど多くはないですが、なくはないです。そこまで、割り切れる人がいないんでしょうね。日本は「私のチームだから、コーチである私が振付してあげなきゃ!」という観念にまだとらわれていますね。

逆に、日本のチームで優秀なところには、世界大会に行くと、いろんな国から振付のオファーがきます。びっくりしますよね。でも、それが実現したことはまだないですね。「そんな!とんでもない!私には無理です!」っていう日本人らしさが出るというか、控えめなんですね。

アメリカはそれがビジネスとして成り立っているので、「僕はどこの振付をしたよ!そのチームは世界チャンピオンになったよ!だから僕はすごいんだよ!」とタイトルとして表に出します。それが次につながりますが、日本は「いえいえ、私なんて!」っていう謙虚な国民性ですからね。でも、もう何年もすれば変わってくると思いますけどね。

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なるほど。そこはストリートダンスともつながりますね。 ヒップホップとジャズとポンポンに関しては日本も同じルールですか?

羽柴

はい、同じです。

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チアの方たちが、ヒップホップとジャズのダンススキルを取り入れているということですよね?もともとヒップホップを踊れる方たちではないんですよね?

羽柴

ニュアンス的に、ストリートダンサーが踊るという感じではないです。やはり、チアをやっていた人たちがヒップホップを踊る感じです。

音楽はヒップホップではあるけれども、歴史やダンスの背景などの観点にはこだわっていないです。

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音楽がヒップホップであり、それに合わせた動きという感じでしょうか。

羽柴

羽柴そうですね。あとは、チームでやるものなので、多くて20人以上でヒップホップという動きを入れた演技をやります。

何て言ったらいいんでしょうね・・・チアヒップホップと言いますか、ジャズも言うなればチアジャズですかね。どちらも、集団でしか出せない演技をやります。1人でブレイキンをやることはあまりなくて、フォーメーションを移動しながらステップを踏むとか、座る人がいれば、高いリフトを作ったりして高低差を作り、空間を利用します。

あと、選曲や振付は大会自体のルールでもありますが、誰が聞いても見ても、不快じゃないものをやらなければいけないし、スラングや卑猥な言葉など、反社会的・教育的ではない言葉が入ってはいけない。なぜならスポーツシーンにふさわしくない、またチア自体がスポーツであるから。

そこでヒップホップに対してだいぶ制限がかかってしまうのです。ピストルの仕草もダメです。もっと大衆に向けられる受け入れられるヒップホップの演技が求められます。

表現も、笑顔だけではないですがすごくエネルギッシュなもので、とにかく人に見せるもので、前に来るものになります。だから、みんな最終的には笑顔で踊ります。

ジャズに関しても、普通のジャズダンスではなくて、基本はジャズやクラシックバレエの要素があるんですけど、これもチームで行われなければいけないし、絶対にバレエテクニックを入れなきゃいけないんです。だから、25人全員でフェッテとかトリプルターンとかやります。

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ということは、アメリカの方たちは、フェッテやトリプルターンをやって、ヒップホップもやってポンポンも持てるということですよね。日本はやはりそれぞれに1チームって感じですが・・・。

羽柴

そうですね。アメリカ人は器用ですし、もともとのカルチャーもありますからね。でも、最近はアメリカもジャンルでチームが分かれる傾向も見られますね。

アメリカはチアをやってた人たちがヒップホップをやることがありますが、日本はチアをやってなかった人がチアの大会に場を求めてくるケースがあります。クラブとかに行って踊るほどではないとか、チアの明るさが好きとか。

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チアの子たちの活躍するフィールドとしては、プロバスケットボールのbjリーグではチアを見たことがあるんですが、そういうスポーツの現場以外でのチアはあるんですか?

羽柴

スポーツシーンで活動する子たちもたくさんいますが、スポーツ応援をするチアと、競技をするチアとでは見せ方も違うしちょっと活動の場も違います。

たとえばスポーツ応援するチアの人たちは遠くの人たちに見せるために、ポンポン自体も振付も大きいんです。でも競技はマニアックなので、速い動きのためにポンポンは、小さくしなきゃいけないし、審査員に向けて踊ればいいけど、スポーツでのチアは四方向にいる観客に向けて踊らなきゃいけなかったりして、両者は全然違いますね。

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なるほど。活躍する場が違うんですね。そこからプロに変わる人たちは実業団に所属したりするんですか?

羽柴

日本にチアのプロはいないです。職業には成り立たない。たまたまプロスポーツの場でチアをしていても自分たちはプロではないです。それだけで生活費をねん出できるわけではないので、生きていけない。それはアメリカでも同じです。

アメリカの四大スポーツであるNFLでも、チアは1試合50〜60ドルくらい。どちらかというと、お金よりもステータスのためということのようです。

チア自体のステータスは、学校の中でも高いところにありますよね。学校のスピリットを伝える、学校の看板を背負って応援する。しっかりしていないといけないし、華やかでいないといけないし、リーダーシップがあって、健康美があり、誰にでも好かれる人であったり、嫌味のない人でないと、応援をひっぱっていくチアリーダーとしては成り立たないんですよね。そこには自然とステータスが生まれますよね。そういう要素もチアには含まれています。

たとえば、アメリカでは大学のフットボールの試合なのに7〜8万人観客が集まったりもします。それくらいスポーツを楽しんで見る人が多い中で、フィールドに立てるのは選手かチアリーダーしかいないというステータスだったり、そこに立つべき資質も求められます。

学生ですと、チアリーダーであることにステータスが生まれ、奨学金ももらえるチャンスがあり、学校も推薦してもらいやすいといった制度があるんです。

私がサンフランシスコに行った時に「この町のいいところは何?」って聞くと、「それは49ers(サンフランシスコのNFLチーム)があることでしょ!」と言うわけです。それくらいチームは街の誇りなんですね。プロのチームもだし、大学のフットボールのチームも同じです。ということは、そこのチアでいることはステータスなわけです。

そして、49ersというプロチームのチアであっても、学校や幼稚園の先生や、オフィスで働いているキャリアの人たちがほとんどですね。働きながら、「じゃ、チアに行ってくる!」って感じでしょうね。周りの理解度も違うでしょう。

ブロードウェイ・ミュージカル「ブリング・イット・オン」公演特集 羽柴多賀子 〜 エールの先導者たち。 〜

舞台で観るチアに注目。


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先ほど振付師の話がありましたが、チアの振付をダンサーの方がやったこともあるんでしょうか?

羽柴

いやー、ないんじゃないでしょうか。ジャズの専門的な部分をジャズダンサーの方につけてもらうっていうのはあるかもしれないですけど、すべての振付をダンサーの方がやったのは聞いたことないですね。

でも、ヒップホップはダンサーさんにお願いしているケースはありますよ。なので、こうしてチアがスポーツとしてもダンスとしても認知してもらえてるので、これからますます何かがつながり、生まれて来るといいなと思います。

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羽柴さん的には、これからどんなチアになって行くと思いますか?

羽柴

私たちの協会はアメリカの西海岸の協会ともつながってるんですが、今回の「ブリング・イット・オン」にも関わっているVARSITYというカンパニーが、アメリカの主となる協会を統括しサポートしています。

協会は普及団体であって、営利目的の運営を行うところではないので、ルールなどを統括しインストラクターの育成や大会運営のサポート・スポンサーをしてくれるのです。VARSITYと私たちのUSAもファミリーとしてチアの普及をすることになりました。それによってUSA以外の協会ともおつきあいをすることができるようになってきたんです。

更にはチアが世界的に認められたスポーツになりました。昨年、スポーツアコードというところに認可されたんです。「もしかして、いつかオリンピック競技になれるかも!?」のための第一歩ですね。これによってますます状況が変わって来ると思います。

TDM

日本のチア人口はどれくらいなのでしょう?

羽柴

高校の応援も含めると、何十万人くらいでしょうか。当協会の大会でも1万人が参加しています。

年齢層も幅広くなりましたね。下は3歳から上はシニアエイジまで。子供の習い事として広まっているというのも、ひとつのきっかけになったと思います。だから、トップクラスのスポーツとしても子供や大人のスポーツとしても、生涯スポーツにもなれると思います。

教育的なスポーツだと思うんです。応援するという理念だったり、リーダーシップを取るという理念だったり、ステータスとは何か、と言ったことには教育と通じていると思います。

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可能性がいろいろありますね。ダンサーが今回の「ブリング・イット・オン」を観るためのオススメの視点はありますか?

羽柴

羽柴ステージを立体的に作っているところはおもしろいと思います。舞台装置がなくても立体的かつスピーディにできることと、もしかしたらほかのジャンルのダンスをされている方は、チアの表現が、「なんでそんなに笑顔なの?なんでそんなに前に前にくるの?」と思う方もいるかもしれませんが、それが特徴としてはあります。熱くならないと応援はしてもらえないから、とにかく笑顔で前に前に人に伝えていく独特の表現になりますね。

あとは、チア、特にチアリーディングのほうは、1人でも具合が悪くて休むことがあれば練習ができないんです。組み技で人が立てなくなるから。なので、そこにはチームワークが絶対必要。

ダンスは合わせるまでは1人で練習するけれども、チアリーディングは1人では練習できないので、そこがチームスポーツであることも特徴ですね。トランポリンやワイヤーなどの器具を使わないで生身の人を上げるとか投げるのもおもしろいかもしれないですね。それを曲に合わせてやりますからね。

TDM

ダンスと通じるところと独特の魅力がありますね。チア出身のストリートダンサーも結構いるのでこれからうまくつながっていけると思います。そして、生で観れる「ブリング・イット・オン」もますます楽しみになりました!今日はありがとうございました!
interview & photo by AKIKO
'14/07/12 UPDATE
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