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男子新体操 〜 ハジケル若き表現者たち。 〜

■「カルピスソーダ」新CM撮影現場レポート   インタビュー

某日某所、TDM編集部は「カルピスソーダ」新CMの撮影現場にお邪魔した。青空の下、リアルに飛び・跳ね・回る男子新体操部員たち。だだっ広いグラウンドに競技用のマットが敷かれ、タイトな撮影スケジュールの疲れも見せず、むしろ、普段味わうことのない野外の即席フロアを楽しんでいるように見えた。休憩中も、一人ずつ順番に並んで宙を舞ってみせる。技が決まるたびに遠くから眺めているスタッフやエキストラたちもどよめく。若いって素晴らしい。

男子新体操部 〜 ハジケル若き表現者たち。 〜

そもそも、なぜ「カルピスソーダ」のCMに男子新体操が起用されることになったのか、疑問に思った我々は今回のプロジェクトを担当する(株) 博報堂コピーライター石井雄樹氏と、アートディレクター小松季弘氏にその真相をお伺いした。

  

青森山田高校男子新体操部 荒川監督のインタビューはこちら
「カルピスソーダ学園」オフィシャルサイトはこちら



ひたむきにはじける姿が、「カルピスソーダ」そのもの。

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「カルピスソーダ」と男子新体操、すぐには結びつきませんが、出会いは何だったのですか?

石井氏

たまたま演技映像を見て、世の中に、アクロバティックなスポーツは他にもありますが、6人が完全シンクロする男子新体操には、衝撃を受けました。

「個性を大切にしなさい」と育てられてきた近ごろの典型的な日本人だったら、あそこまでカンペキな団体演技を見せられると、日本人の大切な何かを教えられたような感覚になると思います。人間離れした技に魅せられると同時に、僕たちが失った大切な何かにエールを送りたくなる演技。それが、男子新体操の魅力のひとつだと思います。

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男子新体操をCMに起用することになった経緯は?

石井氏

「カルピスソーダ」のコンセプトは、「白くピュアにはじける炭酸飲料」。6人の男子新体操が、手の指先から足のつま先まで息をそろえて、ひたむきにはじける姿は、まさに、「カルピスソーダ」そのものだと感じました。

小松氏

「カルピスソーダ」のメインターゲットである中・高生の嘘偽りのない「リアルなはじけた青春」を描きたくて学園を想定したところ、陽は当たっていないかも知れませんが、メジャーではない競技にひたむきに頑張っている男子新体操部のはじける姿がイメージにぴったりでお願いすることにしました。

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では、“ダンス+男子新体操”という表現の可能性をどう思われますか?

石井氏

「ルールが自由な中で生まれてくるダンスの表現」と、「ルールが厳しい中で生まれてくる男子新体操の表現」。お互いまったく別のものであるからこそ、その2つが融合されたときに、人々がまったく観たことのない表現が生まれてくる可能性があると思います。

小松氏

物凄く未来の可能性を感じます!ウルトラC同士の夢の競演とてもとても楽しみです!!

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では、最後に石井さん、小松さん自身の中でプロとして仕事をしていく面で大切にしていることを教えてください。

石井氏

“コラボレーション”とか“ケミストリー”とか、そういうカッコいい言葉が嫌いなんです。お互いをプロとしてリスペクトしあうことはもちろん大切だと思いますが、お互い身構えすぎてしまうと、あまりいい結果にならないことが多いと思います。打合せが終わった後、飲み屋さんで1杯やりながら、“仕事仲間”として気楽に打ち解けあう。それがなかったら、男子新体操業界と、広告業界も、シンクロできなかったと思います。

小松氏

やっぱり誰よりもその仕事を好きになって、やり抜いて結果を出すことがプロの仕事だと思います。

審判よりも観客を魅了したいんです。

現場にいた荒川監督に「メンバーの中で、将来、ダンスを視野に入れている子がいたら、その子にインタビューしてもいいですか?」と言って、連れて来てもらったのが、青森大学3年の大舌恭平君。

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将来はダンス関係の進路を視野に入れていらっしゃるんですか?

恭平

あ、はい (照笑) 。普段、直美コーチのダンスレッスンに通っています。踊ったり観客の前で表現するのが好きで、ゆくゆくは、舞台方面などに行ってみたいです。審判よりも観客を魅了したいんです。

アクロバットだけでなく、最近は荒川監督の方針もあって、ダンス的な要素が増えている分、個性が出せることが楽しいですね。

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でも、ゆくゆくは舞台で生きていきたいとなると、安定とは言えないし、親御さんは心配しない?

恭平

最終的に安定すればいいよと言ってくれています。教職免許もあるので。

TDM

もともと岡山の高校にいたそうですが、なぜ青森大学に?

恭平

いろいろな大学から声をかけていただいたんですけど、高校の恩師が青森大学のコーチの後輩、荒川先生の親友でもあったので、いろいろなお話を聞き、青森大学なら人間的に成長できると思ったからです。

TDM

実際入ってみて、人間的な成長はあった?

恭平

監督が教えてくれるのはいつも「気を使え」ということと、「自分で考えろ」ということ。やはり社会に出ると、自分で道も選ぶし、自分で考えるようにならなくてはいけないので。・・・とても居やすいですね、寒いですけど (笑) 。

ただ、時々あるワークショップなどで、新体操以外の人のめずらしいものがあったりすると、ちょっとやってみようかなぁとワクワクしたりもします。

TDM

仲間と将来の話はする?

恭平

たまにしますが、基本みんなあまり考えてないです。今まで新体操だけやってきましたが、新体操が活きる就職先は、教育関係かマッスルミュージアムなど限られたところしかないので。

TDM

なるほど。これからその就職先になるような環境を監督とともに作っていけたらいいですね。できることは協力させていただきますので!ありがとうございました。
'09/06/29 UPDATE
interview & photo by AKIKOimu
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