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石川浩子 青柳有厘「HIROKOminion・モモレンジャーズ」〜just a fun!〜
石川浩子 青柳有厘「HIROKOminion・モモレンジャーズ」〜just a fun〜
石川浩子と青柳有厘のコンビが再び舞台作品を世に送り出そうとしている。「HIROKOminion / モモレンジャーズ」というインパクトのあるタイトルで、今回もしっかりとダンスで魅せると話す二人。ダンサーへの様々な想いを抱きつつ、今だからこそ純粋にダンスを楽しんでもらいたいと、今回の作品に向き合っていた。息の合ったナイスコンビネーションも読み所のロングインタビューをご覧あれ。

石川浩子(写真右)

TV「ダンス・ダンス・ダンス」のレギュラー“MEGAMIX”のメンバーを経て、安室奈美恵・郷ひろみ・MAXなど数多くの有名アーティストの振付、バックダンサーをつとめ、CM、PV、TV出演などでも輝かしいキャリアを誇る。アンダーグラウンドでも絶大な人気を誇る“Ah-pu”“GoGo!Rabbits”のメンバーとしても活躍。 レギュラーレッスンの他、全国でワークショップも行っている、ジャズダンス界の大御所中の大御所。

青柳有厘(写真左)

愛称ちびた。学生時代からの豊富なダンス経験を活かし“GoGo!RABBITS公演「FairyTale」”の制作を担当するなど、スタッフとして数多くのダンス公演に関わる。2005年“自分達が見たい舞台を作る”を合言葉に、石川浩子と共に「THE WITCHES」をプロデュース、更には構成・演出を務めるなどその中心的役割を担う。ステージ上でダンスの魅力を最大限に表現することを目指して、ファンタジックでユーモア溢れるエンターテイメントとしてのダンス公演を作り続けている。
CHITO

演出の魅力・・・人への感謝の感動。

TDM

まず、今回の舞台はどういう内容になってるんですか?

石川浩子
(以下浩子)


石川浩子/青柳有厘Act1の“minion”は私の生徒の発表会で2006年に初回をやった第二弾です。そして、Act2の“モモレンジャーズ”は、モモレンジャーに憧れる15人の女の子の物語です。それも地球人じゃなくて異星人。モモレンジャー星の15人の奮闘劇です。

青柳有厘
(以下ちびた)


まぁ、タイトルからテーマ性が浅いことはおわかりいただけると思いますが、前作浩子さんと演出した「THE WITCHES」、「Strawberry‘s」と同様、非常に馬鹿馬鹿しくなってます (笑) 。

浩子


毎回チラシはかわいくて、インパクトがあって、さらにこういう題名を見て、ちょっと面白そうだなと思ってくれれば嬉しいね。でも、面白いだけじゃなくて、ちゃんと中身はすごくダンスを見せるものになってます。

ちびた


軸はちゃんと作っていて、ダンスの良さを最大限に引き出しつつの面白さもあります。

浩子


振付の先生方や生徒も含めて、こういう作品が創れるんだっていうことをどんどん広めていきたいの。

ちびた


まぁ、大御所の皆さんも、石川浩子からのお願いだったら、断れない、みたいなね。

一同


(笑) 。

浩子


でも、私も皆からのお願いにはノーとは言わないし、持ちつ持たれつの関係で頑張っていかないとね。ありがたいことに、皆真剣に作品に向き合ってくれるから、私たちも作品を台無しにしないように、頑張って繋がなきゃって思う。

ちびた


こちらから要求し過ぎて、創ってくれた方のカラーが全く出ないのもダメなので、そのバランスが肝心ですね。

浩子


石川浩子最近いい振りを作れる人はたくさんいるんだけど、一曲の作品として創れる人が少ないのかなって思う。ストーリーや演出も興味がないのかわからないけど、別に芝居がかってなくていいんだよね。ただ、ナンバーを上手くつなげていけるとか、何かのコンセプトがあるだけでいい。全員で一つの作品に参加したっていう達成感があるし、記念にもなると思う。創っていく過程でも、踊りだけじゃなくって、踊りに関連したいろんな要素を学べるし、他のナンバーとのコラボも楽しいしね。

ちびた


しかも、今は発表会を掛け持ちするダンサーさんが多いので、単純にナンバーを羅列する方が助かるんだろうし、凝れば凝るほど責任がとれなくなる恐れがあるのかも。

浩子


年に何回も発表会があるから、作品に時間をかけていられないんだろうね。あと、やっぱり演出があると創るまでも大変だしね。時間もエネルギーもすごく使うし、羅列形式を演出にしたからってそこまで儲かるわけでもない。でも、絶対そういう経験をしたダンサーのほうが、プラスになると私は思う。

ちびた


しかも、観てるお客さんも楽しめますしね。

浩子


そう。私たちの目標としては、ダンサーじゃない人たちが観ても楽しめるようにしたいの。単にナンバーの羅列だけだと、ダンスをしてる人はそれぞれのダンスを楽しめるけれど、ダンスを知らなくても、踊ってなくても観にきたいって思う人にも楽しんでもらう要素として、演出やストーリーがあるとダンスが伝わりやすい。

ちびた


俳優目指してる人しか映画を観ないってわけではない。映画は一般の人のものになってる。だけど、ダンスの舞台ってダンスをやってる人だけが観にいくっていうイメージがまだありますよね。

浩子


ダンサーの数も、いる場所も限られてるし。でも、そうじゃなくて、そこをもっと広げていきたいなぁ。

ちびた


だからという理由ではないですが、私たちの作品に共通しているテーマは、良くも悪くも“浅い”。とぼけた設定で単に楽しい!あははは!って (笑) 。その方が本質が伝わり易い気がして・・・

浩子


そうそう、浅い。本を見ないとわからないとか、説明されないとわからない、っていう難しいものではなくて、一度観たらわかるような、シンプルで喜怒哀楽のわかりやすいもの。かっこいい踊りだけでもなくて、ちょっとコケティッシュだったり、怖かったり・・・。

TDM

それって浩子さんの性格が表れてるような気がしますね。上辺だけの浅さではなく、シンプルな中にも芯があるから、クリアで伝わりやすい。

浩子


そうかもしれないね。今回の舞台は一部は私の生徒の発表会で、二部は生徒の中でもプロとして活動してたり、経験のある子たちが出るんだけど、どちらもまず、その子たちをよく見せる為の軸を作ってあげないといけない。

石川浩子/青柳有厘ただ単に上手い人たちだけを集めると、そこまで演出に凝らなくても作品として上手くいっちゃうんじゃないかなと思うようになって。今回は私の生徒だし、そういう“人頼り”な部分ではないから、彼女たちをより上手く見せないといけない。

ちびた


二部に関しては、全体のストーリーの始まりから終わりまでを、その子たちを使ってどう面白くお客さんに伝えるか、にかかってくる。だからこそ、皆頑張るんですよね。

浩子


今回私は演出で、つまりは裏方。でも、裏方が嫌な人もいると思う。でも、演出だけに回っても、その充実感はすごくいいと思う。もちろんそれだけに終わりたいわけじゃないんだけど、それはそれとしてある。

TDM

表と裏とで達成感の違いは、変わりますか?

浩子


変わる。演出するときは、踊ってるときの気持ちよさの達成感とは、ちょっと違う感動がある。WINGでゆりか(港ゆりか) と一緒に演出したのが初めての演出だったんだけど、そのときの達成感がものすごかった。

自分が踊ってやりきったときは、自分に対しての「やったー!」っていう達成感だし、先生として観てて、涙が出そうになりそうな生徒たちの頑張りがくれる感動とも違う。演出のときは、たくさんの人が関わってくれて、人に対しての「ありがとう!」っていう感謝の感動だったんだよね。それで、「私、結構演出も好きかも。」って思っちゃったの。

とにかく、人への感謝の感動はすごかったなー。先生たちはもちろん、舞台監督さんやスタッフさんへの感謝がね。だから、私はその忘れられない感動の為にも、大きくなくても良いから、演出もちょっとずつ続けていきたいな。

今回の舞台も、その時に舞台監督の補助をしてた狩俣さんて方にお願いしてるの。あの時ものすんごい助けてくれたから「この人じゃなきゃもうできない!」って思って、「THE WITCHES」も「Strawberry‘s」もお願いしたんだよね。

TDM

どういうところで助かりましたか?

浩子


ただの仕事のやり方じゃなかったの。こちらからの意見に対して、「ハイ、できます、やります」じゃなくて、「こういうのできるよ」「こういうのやろうか?」ってたくさん案を出してくれた。言ってもないのに、当日現場行ったら、「こういうの必要でしょ?」って言って、シーンに合った小道具を用意してくれたり。一緒に創ってくれる感じがしたな〜。

ちびた


こちらの意見に対して、どんなに大変でもめんどくさくても、一切“ノー”とは言わないんですよね。「こういうのあったらいいよね!」っていうのを一緒に考えてくれる。

浩子


気持ちで動いてくれるというか。「え!?こんなことまでやってくれんの?」「うん、他の舞台で余った機材があったから。」って (笑) 。普段はぽわーと穏やかな人なんだけど、いざ仕事が始めると、まぁテキパキしてて、よく見てる人。

ちびた


青柳有厘現場ってピリピリするんですけど、そのお人柄で穏やかにしてくれるんですよ。「THE WITCHES」のときに、本番前日BE BOP CREWのAKANEさんが怪我して出れなくなって、ものすっごい大変だったんです。でも、舞台監督さんは「大丈夫です。」って落ち着いて対応してて、なんとか無事に楽日を迎えました。で、最後の公演でジャン!って終わったら、「っボーン!」って特効みたいなのが出て、私たち全員知らなかったので「なんだアレー!?」ってびっくりしちゃって。しばらく感動で動けませんでした。

浩子


予算外なのに、私たちに内緒でプレゼントしてくれたんですよ。そういう気持ちで動いてくださる方なので、将来的にもっと恩返ししていきたいなって思います。それぐらいのすごい人で、こうして出会えたのも運命を感じますね。

金銭的にはまだまだ余裕はないですし、かといって公演で儲けたいとも思っていないので、本当に関わってくださる方には感謝です。でも、いい物を作っていればお金もそれに伴ってくると思うし、ただ、それがいつになるかはわからない。自分たちが50歳を過ぎてからかもしれないし・・・でも、そういうものだと思うんですよね。焦らず。舞台づくりは60歳でもできると思うし・・・。

ちびた


60!? (笑) 。まぁ、確かに・・・。浩子さんなら80くらいでもやりますよ (笑) 。

浩子


それは勘弁して〜 (笑) 。でも、ちょっとずつ、無理なくこの感動を続ければいいかな。

母親になって生まれたビジョン。

浩子


でも、こういう舞台をやるようになってから、人に対する接し方が大人になったような気がするな。仕事ってただこなすだけじゃなくて、人間関係がものすごく大きい。

ちびた


お客さんもお金を払って時間を割いて観に来てくださるわけですから、有難いですよね。私は本番を客席から観てるんですけど、始まる前はもんのすんごく緊張してるんですよ。お客さんにどうやって受け入れられるんだろうって。で、狙いどころで笑ってくれると、もうね〜!嬉しいんですよー!

浩子


私たちは何度も観ちゃってるから、本番1週間前くらいになると、これは本当に面白いのかな?身内だから笑えてるのかな?って疑い始めちゃうんです。でも、現場に入ってスタッフさんが笑ってたりするのを見ると、「ヨシッ!」って安心しますね (笑) 。

観に来てくれる知り合いは皆おべっかを使わないような人たちばかりなので、率直なアドバイスも色々もらいます。私も特にこだわりもないので、作品が良くなることはいいことですし、受け入れつつやっています。ま、人生も同じですけど、何事も前向きに、受け入れていかないと。

ちびた


石川浩子/青柳有厘こんな風に浩子さんが、前向きすぎるくらい前向きなので、人も集まるんでしょうかね。

浩子


生徒たちからはお金をもらってるわけじゃない?だったら、お返しをしなきゃなって思うの。来てくれる子に対して、こっちも何かしてあげたいなって思うし、自分が上の人たちからされてきたことを下の子たちにもしなくちゃなって思う。だから、こういう作品を世に出すことで、頑張ってる人たちがいることや、こんなにいい作品を作ってくれる振付師がいることをもっと広めていきたい。

だから、今回からやる公開ゲネプロとかも、少しづつだけどやりたいことが形になってるなって思う。昔、盲目の人が舞台を観に来たことがあったの。音の振動でダンスがわかるみたいで。だから、そういうこと関係なく、いろんな方に来てもらえるような仕組みも今後考えていきたい。それで喜んでもらえたらまた違った感動があるだろうね。

ゲネプロ:
本番前に本番どおり行う通し稽古のこと。ドイツ語のゲネラールプローベの略。ドレスリハーサル、略してドレリハとも言う。

TDM

母親になったことで今までの感覚と変わりましたか?

浩子


時間は有効に使わなきゃって思うようになった。まいっか〜って延ばさなくなったね。あと、物忘れがひどくなったからいっぱいメモるようになった (笑) 。

あとは、ボランティアとか親のいない子供たちに何かしてあげたいっていうのがものすごく自分の中に起こった。テレビでもそういう番組に目が行くようになって、自分には何もできないんだけど、何かできることないかなって考えるようになったの。私は産まれた子供に愛情は注げるけど、孤児の子供たちは両親から愛情をもらえない。でも、そういう子たちに楽しい出来事をあげたい!って。

ダンスじゃなくてもいいから、とにかく楽しい時間を子供の潜在意識の中に残したいというか、そういうのがきっかけで人生が開かれると思うし。お金をハイって渡すことはできないけど、自分の得意分野で、できる範囲だったらやってみようかなって。

TDM

でも、そういうビジョンを持っているだけでも違うと思いますよ。まず、そういう舞台を観に行くっていうことが日常になるだけでもすごいと思います。

浩子


確かに。今はお金を払って観に行く機会も少ないもんね。ちょっとずつだけど、オンライン販売したら、一般チケットに注文もいただけたし、あ、興味ある人はいるんだなって思った。
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('08/06/13 UPDATE)


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