TDM - トウキョウダンスマガジン

より幅広いジャンルの音楽シーンにダンスシーンが潜入していく・・・
数多くのダンスのジャンルが確立されていく時代の中、90年代終わりから2000年初頭にかけて、HIPHOPシーンの中で新しい動きが見られた。今回はその時代の中で活動しているダンスチーム「迷彩」にスポットを当て、時代が作るダンススタイルの流れを紹介しよう。

1.【時代が作るダンススタイルの流れ】
 ストリートダンス(ヒップホップ)のスタイルは常に流動的に新しい要素を取り入れて変化してきたが、20世紀から21世紀になる1998〜2001にかけて日本のダンスシーンに於いて、一つの変化が起こった。それはこれまで、米国中心のヒップホップミュージックで踊っていたダンスシーンの中で、ヨーロッパ発のテクノや、ハードハウス、トランスなどの所謂4つ打ちといわれる音楽で踊るという流れが出来た事だ。
 最初はビックビートやブレイクビーツなど、比較的ヒップホップのビートに近い、それでいて、BPMの早い音楽で、ステップや音ハメなどをするチームが若手を中心に出てきた。彼らはヒップホップで培ってきた泥臭さ、黒さをある程度残しながら、デジタルなビートにあわせた鋭いスタイルや、勢いのある展開をショータイムの中に取り入れた。
 また、衣装や髪型もタイトで、これまでの黒人を意識したスタイルとは異なっている。(これはデジタル系、や最近ではテックブレイクスとか言われているが、一般的な正式名称はない)一時期このスタイルや音楽で踊るダンサーが増えたが、NYからシェイクや、LAから新しいスタイルが入ってきて、このスタイルの人口はぐっと減った。
この転換期をキッカケにダンスイベントだけでなくテクノ、トランス等、ダンスイベントではなく、クラブタイムをメイン(通常営業)としたイベントにショータイムを移し、それらの音楽やイベントにあったスタイルへと徐々に変化した。音楽を楽しみにきたオーディエンスにパフォーマンスを楽しんでもらうため、ダンス以外にもメイクや、衣装などを用いて視覚からもパフォーマンスを楽しんでもらえるエンターテイメント性を生かしたり、非日常性を出すなど、よりパフォーマンス性の強いスタイルと変化し続けている。

2.【テクノ、トランスなどのパーティーでパフォーマンスを・・・】
 ヒップホップのカルチャーはDJ/ダンス/ラップ/グラフィックの要素が含まれていて、パーティーでダンスショーやラップのライブを楽しみにくるオーディエンスが多いが、テクノやトランスのパーティーでは、DJ/VJというスタンスが多く、ダンスのショーケースはあまり観られない。  ハードハウスや、トランスなどの音楽はゲイカルチャーとの結びつきが強く、これらのパーティーでは、きらびやかな衣装を着たドラッグクウィーンが舞台やお立ち台で、パフォーマンスをしている。この頃は所謂ストリートダンスを踊るパフォーマーは当初観る事がなかった。現在でもテクノやトランス(デジタルな音)で踊るスタンスを持つチームはダンスシーンの流行廃りに関係なく、各自のスタイルとして活躍している。音楽をキーワードに共存したスタンスの特徴としてストリートダンサーがトランスイベントでドラッグクウィーン形式のショウケースを行っている。

3.【パフォーマンスのスタイルについて】
 楽曲のBPMは130-160までの範囲を用いられる事が多く、当然この速さではHIPHOPを中心としたステップは難しく、ON BEATのみの音をとる動きが中心になってくる。変化や面白みを考え、裏の音を取ったり、音が鳴ってから動く音の取り方で変化をつけたりと、音を楽しんで工夫しながら踊るスタンスはどのジャンルでも共通して言える事だろう。また使われている音質によっては、ヒップホップではラップに当たるメロディー等に合わせたりもしている。  デジタルな音にあう、例えば、シャープな動き、スピード感のある動きと、ベクトルの逆でとめるストッピングで、異質感を出してたり、ストッピングは意思を見せない、予備動作を見せない動きを表現する事によって、このジャンルの音楽ならではの特徴を生かしたパフォーマンスが魅力の一つと言える。(最高速度からいきなり止める事によって、ある程度の予備動作はなくせる。)BPMが早い音では、表現し難くなく場合があるので、音の質感を出し、音を形であらわす形がルーティーンのような振りの原則として作る事が多い。またスローモーションや、瞬きをしないなど、異空間の演出が際立つ魅力の一つである。これらはも各チームによってスタイルは異なるが、経験を重ねていくうちに徐々に変化していった部分といえる。

4.【スタイルについての見解】
 まず、このスタイルは東京のダンス(ヒップホップ)シーンの中のから派生したスタイルで、テクノ、トランスなどの音楽を日本人独自の解釈で形にしたスタイルである。ファッションに含まれる、ボディーペイントやマスク、衣装をよりショーアップして、パフォーマンス性を重視している。現在のヨーロッパでは、今の日本の文化に対する関心が高まっており、それは、「サイバー」「クレイジー」等、洗練されているシーンがヨーロッパにも伝わっているから、だったりと様々。  例えば、日本のアニメシーンの発展が技術だけではなく、常に新しいものに変化し、そのスタイルに関心を持つ人が多かったり、評価が高いから注目されているというように、ダンスシーンやクラブカルチャーにおいても同様の事が言える。ロンドンやオランダでも同様の意見を持っている人もおり、現在、国内外を問わず、テクノやトランスのイベントでの パフォーマンスの認知と需要は少しずつ増えてきており、それに伴いストリートダンスを出発点としたパフォーマーがそれらのイベントで活躍する機会も増えてきている。

'04/11/26 UPDATE

文責:NAOSHI(迷彩)

迷彩は、「非日常」、「非人間」をテーマにオリジナルスタイルのダンスを用いて音楽を体で表現するパフォーマンスチーム。主に、トランス、テクノ、ハードハウスなど4つ打ち音楽で踊っているが、どんな音でも表現する事を目指している。都内での様々なダンスイベントでの活動を経て、2001年から、4つ打ち音楽や、その他のイベントに活動の場を移した。現在トランスイベントenvol! @SIMOONやハウスンブレイクスイベントESSENCE @club asiaを中心に様々なスタイルのショーを展開している。

迷彩HP http://www.meisai.jp

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